第5話
僕と直哉はA定食、来栖はB定食とデザート一品を頼んだ。
何とか席を確保し、食事にありつく。
「あなた達天文同好会に入らない?」
デザートを頬張りながら来栖はそんなことを言い出した。
「天文同好会?」
この高校に入ってから2ヶ月ほどだか、そんな同好会聞いたことがなかった?
「部員はどれくらいいるんだ?」
同好会というと、5.6人といったところだろうか。
「...私一人よ。」
渾身のドヤ顔と共であった。その顔は何故か、とてつもない自信であふれていた。
一瞬静寂が訪れる。
「影ながら応援しています...。」
僕はなんとか返答した。
さらに直哉が口を開く。
「俺と周でよければ全然入部するよ。」
「まてまてまて。直哉が入部するのは勝手として俺も??」
「そうに決まってるだろ。」
さも僕が不思議な事を言ったかのような顔をしながら直哉は言った。
「ほんと?じゃあ今日の放課後は第三棟の倉庫にきてちょうだい。」
うちの学校には三つの棟がある。第一は主に生徒たちの教室と教員室の棟であり、第二は理科室や音楽室などの授業用の教室の棟だ。第三棟は、部室や図書館、食堂の棟であり、普通であれば、部活動で使われる部室は第三棟の空き教室を与えられる。
「倉庫?どっかの空き教室じゃないのか?」
「審査に落ちたわ!」
そんなに威張れることではないはずである。どこからそこまでの自信が湧いてくるのであろうか。
「まあ、細かいことは部室で話すわ。」
「じゃあ放課後第三棟の倉庫にいくよ。」
「ええ。待っているわ。」
直哉のナンパ講座は終了し、食器を戻して三人で雑談をしながら教室へ戻っていった。
なにかを忘れているようで落ち着かなかった。
授業開始前にトイレに行き、手を洗い鏡を見た瞬間。
「僕は...井野田周だよな?」
なんとも言えない忘却感は、自分があまりに非日常に順応していることによって、自分がまるで小説にでててくるキャラクターであるように思え、自我を失いかけていることによるものだったと気づく。
僕がトイレを出て向かった先は教室ではなく
図書館であった。
静寂、静寂。授業中の廊下の静けさは異様であり、自分の足音、息ずかいがあたりにこだましている。
図書館なんて入学して以来訪れていないことが災いし、どこにあるのか一瞬迷いながらも図書館の看板を見つけ、扉を開ける。
平成のラブコメをもう一度 ヨル @nana7710
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