第4話

僕は昼食に安らぎを求めていた。善人も悪人も、妄想も中二病も食の前には平等なのである。

授業中は、早く昼休みになってくれと願うばかりであった。

4限の授業が終わると、直哉が寄ってくる。今日初めて会ったはずだが、なぜだか直哉とずっと友人だったような記憶がある。

もう僕は開き直ってすべてを受け入れることにした。


「昼飯行くか。」

「あん。」


直哉に適当に返事をして、二人で食堂に向かう。

前を行く直哉が廊下のコーナーを直角に華麗に曲がった。はずだった。

そこそこの衝撃、ついた尻餅。

あいつは人と激突した。数メートル先に少女が同様に尻餅をついている。

さながらひと昔前のラブコメのワンシーンである。


「...悪い、怪我無いか?」


立ち上がりながらそう言った。


「ええ大丈夫よ。」


少女はお尻をさすりながら立ち上がり、聞こえないぐらいの小声で言った。


「そう...あなたが...」


直哉には聞こえていないのか、構わず言う。


「今から食堂いくなら一品奢らせてくれ。」


まじかこいつ。

それはもう紳士とかじゃなく新手のナンパに見えるぞ。心の中で毒づく。

まあさすがに初対面のやつにほいほ...


「じゃあお言葉に甘えさせていただこうかしら。」

「行くんかい」


思わず口に出た。

この子が軽いのか、こいつが天性のラブコメ気質なのか、はたまた両方か。


「ええもちろん。頂けるものには遠慮しない主義なの。」


なんだかんだ言いながら、三人で食堂に向かう。


「同級生だよね。クラスと名前教えてくれない?」

「C組の来栖瑠璃よ。」


さらっとクラスと名前を聞き出す直哉。ちなみに直哉が同級生の女子の顔を全員覚えているわけではなく、制服の色が学年によって違うということを、彼の名誉のために記そうと思う。

食堂はもうすぐだ。もうこれ以上面倒な事には巻き込まれたくない。




ふと思い立ち、スマホのカレンダーを確認した。



厄日だった。












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