【手遅れ気味な】同僚を覚える【お勉強】#2

4.




「うぃ、お次は冥王センパイ行きたいと思いまーす」



(めっちゃ進みおせー

(のろのろだからな

(休んでばっかだしな

(やる気ないしな

(草



「コメント欄で私の事、ディスるのやめよっか?」



(やめん

(おもろいから無しで

(生き甲斐

(善処はする

(ディスりではない。愛のある罵倒だ!



「変態しかいない‥‥」



(変態言うな

(断じて変態ではない

(見んのやめんぞー^^

(それはお前だろ



「あー、はいはいすんませんね。私が謝れば良いんでしょう。見るのやめないでくださいませー」



(棒

(棒

(めっちゃ棒

(誠意が感じられない

(とりあえず、謝ればいいと思っている



「‥‥‥お前ら、こんなんだからいつまで経っても進まねえんだよ!!」



(はいブーメラン

(おまいう

(お前が言うな

(俺たちのせいにすな

(草ァ!

(それはいいからさっさとやれ



 え? えぇ、なんなん? 私が滅茶苦茶頑張って進めてんのに! 滅茶苦茶頑張ってお喋りしてんのに罵倒するって何ですか? 怒って良いですか? あー、そうですか早くやれですか。わーかりましたよー。やればいんだろー、やればー(口癖)。こんなん秒で終わらせてやらぁ!!



「——はいはい、分ぁかってますよぉー」



(わかればいい

(よし

(喘息前進

(しゅっぱーつ

(上の奴、漢字間違えてるぞー

(喘息ってwww



「喘息前進

 ——うん、喘息持ちは走らないようにしよっか」



 名言ならぬ、迷言か?



(草

(www

(迷言の誕生

(ようやく進むかと思ったらコレか

(一進一退

(よし。今度は間違わなかったな

(人間は学習するのだ~



「喘息前進は置いといて‥。みんな大好き、冥王センパイだよね。わかってるぞー」



(みんな大好き、ではない

(ふつー

(興味なし

(あれは見る奴を選ぶからな‥‥

(逆だろ

(あぁ。冥王あいつが見る奴を選んでる



「あー‥‥」



 〈サンライ〉所属ライバー冥王セイは〈宇宙の終点を紡ぐ支配者にして、覇者〉という設定の、いわゆる魔王ムーブを全開にしているライバーで〈サンライ〉の堂々たる0期生三人衆のうちの一人。設定に途轍もなく忠実で片時もその口調が崩れたことはないという——もはやそれが素なのでは?とは他ライバーの呟き——あまりにもライバー向けな人物である(中の人などいないという意味で


 ただ、その設定が設定だけに見る人を選ぶ。というか、冥王セイ自身が選んでいると言っても過言ではない


 配信中は基本的に無言で、基本動作が不機嫌そうに顔を歪める。舌打ちをする。悪態を吐く。カッカッと——たぶん、指で机をトントンしてる——何かをはじく音。適応個体珍しい(冥王のリスナーの事)は気持ちを落ち着けるためにしているのでは?と考察をしている)

 コメントもほぼほぼ返したりもしないし、質問に答えることもない


 テンションがぶちあがったときに魔王らしく高笑いをし――その時ばかりは高圧的にだが――質問にも答える。配信者というよりかは、まさに魔王というイキモノがピッタリな覇者兼魔王様である


 ――ハッキリと言えば、あまり配信者向けではない


 が、なににハマったのか、一部の層に根強く、根気強いファンがおり、〈サンライ〉の中でも、異質な‥‥‥不思議な存在感を放っている、癖が強いライバーである


 何が言いたいか


 ようは0期生の名も伊達ではない、ということだ





・・・・・・・





 「んー、私は好きだけどな。冥王パイセン」



(は?

(ついに先輩に媚を売り始めたか

(先輩→パイセン

(今までも危なかったもんな。センパイ呼び

(隠せなくなったな



「ちょい‥。媚売りではないぞ?

 ただな、うちには愚弟がいるからな。静かな配信がとても落ち着くのだ。まぁ、行ってしまえば虚無配信だが、それの何が悪いんだ? うるさいだけなら、ウチの愚弟でもできる。個人に合ったやり方、見方でいいではないか。

 物好きでは決してないぞ? それが好きなだけなんだ。馬鹿にしてやるな、リスナー共よ。ところ変われば、お前たちも物好きだと馬鹿にされているかもしれんのだぞ?」



(‥‥‥

(‥‥‥

(‥‥‥



「ん?」



 思ったことがするすると口をついて、神妙な声音で出ると、コメント欄が沈黙で埋まった



(えー、と‥‥。ここは夕坂冬火の配信画面でよろしいか?

(唐突ぅ〜

(おれにはわからん

(ちょっと、マテ

(脳がバグるんだが

(ここは夕坂冬火でおk?



「ここは夕坂冬火ではないんだが‥‥。まぁ、私の配信画面という意味なら合ってるぞー」



(うーむ、幻聴幻覚ではなかったか‥‥

(おかしいな。俺たちのサンドバッグがどこかに消えたぞ??

(えぇ‥‥。冥王のリスナーが泣いて感謝するぞ‥‥

(本人はさておき、な

(人格ブレブレすぎでは?



「人格ブレブレなのは否定しない」



 私自身でもよくわからんからなー

 それはさておき、誰がお前たちのサンドバッグだ。張り倒し返してやろうか








【手遅れ気味な】同僚を覚える【お勉強】


 最大同時接続数:608

 高評価:564

 低評価:43


 夕坂冬火:チャンネル登録者数 30564人

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る