第77話 懐かしの遊園地

「そうそう、本題入ろっか!」

拓真が軽く手を叩き、明るい声で切り替える。

「ゴウ!今度の日曜、みんなで遊園地行こ!」

「遊園地?」

怪訝そうに剛士が眉根を寄せた。

「ほらほら、あそこ」


件の遊園地の名を出し、拓真が微笑む。

「ゴウも子どもの頃行ったでしょ?久しぶりに童心にかえって、思い切り遊ぼうよ!」

「でもあそこって、そんな大きくないだろ。遊べて2、3時間じゃないか?」

「それがいいんでしょうが!」

「はぁ?」

当然ながら、サプライズを知らない剛士は、拓真の不自然な熱意に首を捻る。


「あ、あのね」

悠里が助け舟を出した。

「拓真さんね。この間、イトコの女の子と遊びに行ったら乗り物が新しくなってて、すごく楽しかったんだって。だから、みんなで行きたいなあって」

「そうそう!あんまり拓真くんが楽しかったって言うからさ、ウチらも行きたくなっちゃったんだよね」


「……ふうん」

女子2人からの説明に、剛士は一応の納得を見せた。

「ね、ゴウ!2人もこう言ってることだし、行こうぜ?」

「わかったわかった」

剛士が苦笑混じりに頷く。

「そう言われたら、俺も行きたくなってきた気がする」


「やったあ!」

拓真と彩奈が同時に歓声を上げた。

「あそこは日曜日でもそんなに混んでなかったから、普通に楽しいぜ?」

「みんなで遊園地!いくぞー!」


異様に、はしゃぐ2人の様子に再び首を捻りながらも、剛士は傍らの悠里に囁いた。

「……楽しみだな」


向かい側で騒ぐ2人には見えないように。

テーブルの下でそっと、剛士が彼女の手を包み込む。


最近少しだけ慣れてきた、大きくて暖かい手の感覚。

「……うん!」

彼の手をきゅっと握り返し、悠里は微笑んだ。

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