第22話 髪

八百屋さんで働いていた◯子は、いつ頃か

あの壁の割れ目から長い髪だけがはみ出しているのを

当たり前のように見ていた。


ただその長い髪は誰も気づいてもくれなかった。

それも当たり前のように振る舞い気づかないふりをしていた。


5年もすぎた頃、八百屋はたたむことになった。

経営を芳しくもなく、赤字になった為だ。


◯子はその後、新しい夫となる人と一軒屋に住むことになる。

新居となる家の壁に少しばかりの黄ばみがあることに気づき、

そこからひび割れを起こし始めていた。


「あ、またか・・・・」


「何かあるの?」夫は聞いてきたが、


知らないふりで

「なんでもない・・・・」


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