第2話 声
この話は作者自身が体験した話です。
まだ、学生時代の頃。当時は専門学校に通いながら、夕方にはアルバイトをしていました。
ピザ屋で配達員をしていたのです。
その時も当たり前のように注文を受け、宅配先にまでバイクで走らせました。
市街にある一軒家に着いてバイクから降りると積んでいたピザを手に持ったまま、ドア横の呼び出しボタンを押しました。
ピンポーン!
少しドアが開いていたのを確認すると
廊下真っ直ぐにキッチンがあるらしく
忙しそうな声で女性が答えてくれました。
「はーい!待ってくださいね、今手が離せないもので」
「分かりました。」と返事しました。
それから5分待っていたのですが、一向に来ようとはしませんでした。
キッチンから食卓の音は聞こえてはくるものの、そんなに忙しいものなのだろうか・・・と思いました。
しびれを切らした店員は、
「あのー、先に会計だけでもいいですか?」と訪ねました。
ガシャ!ガシャ!と調理器具を立てる音は聞こえてくるだけでしたが、少し経つと
「はーい!待ってくださいね、今手が離せないもので」
また、同じことを言ってきたのです。
「はあー早くしてください!!」とキレ口調になる店員。
その時はイライラしていたのです。
少し間が空いた後
「はーい!待ってくださいね、今手が離せないもので」
「だから!!」半ギレになりつつも
「はーい!待ってくださいね、今手が離せないもので」
「・・・・・え?」
「はーい!待ってくださいね、今手が離せないもので」
「はーい!待ってくださいね、今手が離せないもので」
「はーい!待ってくださいね、今手が離せないもので」
それは同じ言葉を何度も繰り返してました。まるでテープを再生してるような。
そしてまた、
「はーい!待ってくださいね、今手が離せないもので」
「はーい!待ってくださいね、今手が・・・・・・あ・・・は・・」
声は、突然エラーが起きて切れそうなトーンに変わっていきました。
その時、店員は意を決してキッチンまで向かいました。
「え?、」
キッチンと思われていた部屋には家具がなに一つもなく、ただの空き家だったのです。
リビングも風呂場にもなに一つ置いて
ません。
「どういうこと?まさかの空き家?」
額に汗が滲みながら、恐怖にかられていました。
そんなとき、二階に向かう階段に不思議な跡を見つけてしまいました。
ずっと人が入っていないのかホコリが階段にしっかりとこびりつき、そこには人の手形がしっかりとついていました。
それも今つけたばかりのように。
よく見ると手形と足のあともついていて四つん這いで二階にまで向かっていました。
ガタ!・・・・・
二階のどこの部屋かはわからないもの
それは確かに二足歩行の足音ではありませんでした。
カリカリ・・・・・
ガタガタ・・・・・
四つん這いのなにかが張って歩いているような。
恐怖を感じた店員は、廊下を走り外へ出ました。
後から気付いたことなんですが、家の柵に「売家」の文字が書かれていました。
後日、近隣の人に聞いた話ではあの家は事故物件らしくて、暮らしていた家族が失踪、それから見つかった場所は森林の中で見つかったらしいです。
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