真夜中のライム

   見えない



オヤジの言葉は俺の心に動揺という波紋を残すだけで、その波紋が心の中で乱反射して徐々に俺をかき乱していった。


どうしたらいいんだろう


オヤジの答えは沙織さんに告白をしろと言っているが、俺は彼女が好きなのかどうかがわからない。そんな中途半端な気持ちを伝えても彼女には何も伝わらないに決まっている。


絶対にそうに決まっている。


かと言ってペイペイちゃんを好きというわけでもない。ましてや、紗耶香ちゃんも好きかと聞かれるとはいとは言い切れない。俺としてはどうしたらいいのかはっきり言ってどうにもできないというのが本音だ。


オヤジのせいで中々眠れない。病院という慣れていない環境のせいもあるだが、やはり、この心の不許和音を何とか処理をしないといけない。


こんな状況では、今まで通り沙織さんと夫婦役をしている訳にもいかない。答えが出ない迷宮の中をさまよっている感じだ。


いかん・・・


目が冴えてしまった。今は夜中の3時、こうなるともう眠れない。しかし、ここは病室、テレビなんかつけるわけにもいかない。


さてと


どうする?


とりあえずスマホをつけるとライムに大量の通知が入っている。開いてみるとそのすべてが沙織さんからだった。


大丈夫?


まだ寝てる?


もし気づいたら明日ほしいもの教えて?

明日、朝一に病院に行くから


病院だものね。スマホ見れるわけないか


けど・・・気付いてほしいな


とどけ、私のライム


ゆっくりと休んでください


おやすみなさい


午前1時のライム・・・

沙織さんは多分これを最後に寝たんだろう。彼女からの温かいライム、俺のことをこんなに心配してくているなんて、昨日の喧嘩が嘘のようだ。俺はライムを返した。


        沙織さん、ありがとう


すると、ライムが帰ってきた。


起きていたんだ。めぐみくん、体大丈夫?


        大丈夫だよ


よかった


        ご心配かけました


本当に心配したんだぞ。


        すみません


なぜあやまる?


         つい


つい?


         なんか、俺が悪いことしたみたいで


そうだぞ。死にかけるなんて、本当に心配したんだから


         それはすみませんでした


いいよ。生きていてくれたんだから


         ありがとう


じゃ・・・明日ね


         うん  明日


おやすみ


         おやすみ










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