第12話 「初登校」
沙織さんが来て初めての登校日がやって来たんだけど、さっきからドキドキが止まらない。
何故って?
それは、彼女が何故か俺の横にいるからだ。
沙織さんが
家を出てから
「あの〜沙織さん、そろそろ離れて頂きたいのですが」
「何故?」
「駅が近いんで」
「本当?でも駅、見えないんだけど」
「うっ」
少し話が遡る。朝食を終えた俺がいつも通り片付けをしていると沙織さんがやってきた。
「ねぇ・・道を教えてよ」
「なんの?」
「最寄り駅まで道、知らないんだけど」
「うそ!!」
洗い物のお皿がガチャリと落ちた。少し欠けていたようだけど・・・取りあえず、洗い物を済ませる。
「ははは・・・うそでしょ」
「うそじゃないもん・・・知らないものは知らないんだけど・・」
「土曜日に教えたと思うんだけど」
「そうだったかしら」
「そうだよ」
そこまで言うと沙耶香ちゃんが俺の横まで来て、
「私、時間ないから行くね」
「いってらっしゃい」
「あっ、それと恵さん、お姉ちゃんの方向音痴は筋金入りだから、駅までの距離だと覚えるのに今週いっぱいはかかるから」
「そんな〜」
「だったら沙耶香ちゃんが、あれ?沙織さん?」
「お姉ちゃんは、あそこ」
指差した先のリビングで沙織さんが朝の情報番組のエンタメコーナーを見ている。
「あれを見終わらないとお姉ちゃん動かないから、あっ、もう時間がないから、あとはお願い」
そう言って沙耶香ちゃんは学校へ行ってしまった。
逆に俺は焦った。この時間から出発するということは、同じ高校に行く奴が必ず乗っている。というより俺たちが乗る駅に既に何人かいるのを俺は知っている。
こうして今、一緒に駅に向かって歩いている。
「いつもこんな時間なの?」
「そうだけど・・」
スマホを見た沙織さんは何やら返信をしている様子だった。
「あっ、いつもの時間じゃん。リーナに返信しないと」
「ところで、沙織さん・・・」
彼女の返事がない。返信に忙しいようだ。それより駅が見えてきた。
「沙織さん?」
返事がない。
「沙織さん」
もうやばい。駅前だ。ええい!!
「お義母さん」
いったところで彼女の目が鋭くなった。
「それ言わない約束よね」
「あ・・・ごめん・・・水樹さんは、あそこ駅だから」
「それ言わない約束だったよね」
「ごっごめん、だけと」
「だけと、何?」
「だけど、沙織さん返事してくれなかったから」
「あなた、私のことをバカにしている?」
彼女が膨れている。それより、そろそろ別れないと
「水樹さん、先に行って・・・真っすぐ行ったら駅だから」
「え?どうして?」
「一緒に駅に着いたらおかしいと思われるでしょ」
「そんなことないわよ。それより、どうして?約束破ったのよ」
「だから、それは謝るからとにかく離れて、ほら、そこ、駅だから」
「あっ!」
結局、俺達は一緒に駅について、同じ電車に乗った。すると、彼女のいつもの取り巻き達がその電車には乗っていた。
「さおりん。おはよー」
「おはよー。リーナ」
こうして俺は蚊帳の外へすっとフェードアウトして見せたんだけど、俺の横には佐久間が立っていた。背中をバンと叩かれた
「よう・・恵・・どいうことだ?」
「なにが?」
「水樹さんと一緒に乗って来ただろう」
「え?そうだった?」
「何寝ぼけたこと言ってんだ・・・」
ガタンゴトンと走っていた電車が駅に着いた。
「あ・・下りないと・・」
「恵・・・逃げるな・・まてーー」
こんな光景を水樹さんは横目で見ていたのだった。
「どういうことだ?」
しつこく聞いて来る佐久間・・・しつこいぞ
「だから、おれは知らない!!たまたま、一緒に乗っただけだ」
「ということは、一緒に乗ったということを認めるんだな」
「だから・・・たまたま、横にいただけだろう・・・」
すると本田が教室に入って来た。
「よー恵!!朝から水樹さんとラブラブだったんだって?」
「はぁぁぁああああー?」
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