第3話 「おかあさん 3」
「立原くん・・・今度、亮さんと結婚することになりました。水樹沙織です。よろしくおねがいします」
彼女の衝撃的な言葉で頭の中は真っ白になった。あしたのジョーが真っ白に燃え尽きたのとは異なり、単純に何も考えられない状態と言っていい。そこへ彼女の横に立っていた親父が追い打ちをかけてきた。
「という訳だ。恵。沙織さんが俺の再婚相手だ」
いつもよりもスケベな笑顔をしているエロ親父、と睨んでいるとその横にいる沙織さんの顔が少し暗くなった。けど、こんな無茶な結婚話は反対しないといけないに決まっている。
「俺は反対だ!!それに、これって青少年保護条例違反じゃないか!!」
「何を言っているんだ。恵、俺は彼女に手を出していない。だから、青少年ほぼ条例にはあたらないんだよ」
「だったら、児童虐待じゃないか」
すると瀬里奈さんがおもむろに答えた。
「親である私が認めたことです。それに、沙織自身がこの結婚合意しているのですから、問題ないです」
「それだったら、瀬里奈さんが親父と結婚すればいいじゃないか」
「それは無理」
「なぜ?」
「私はまだ既婚者ですし、今回のことは亮に頼ったけど、亮と結婚することはできない。それともめぐみ君が私たちを助けてくれるのかしら?未成年のくせに偉そうにしないで」
「くっ・・・」
瀬里奈さんの迫力に押されてしまった。けど、このままの状態がいいはずがない。
「水樹さんも水樹さんだ。なんだってこんなおっさんと結婚だなんて!!」
しかし、沙織さんは俺の言葉を頑なに拒むかのような表情(かお)をしている。俺が間違っているのか、普通の女の子がおっさんと結婚させられるというのを守ろうとしているのになぜ、みんなの視線は冷たい。すると
「これも私の運命です」
「う…運命・・・って…」
「このままでは私達、借金取り追われ続けることになります。もう、これしか選択肢がないのです」
「選択肢って…」
「借金を作ったお父さんは私達を置いて逃げてしまいました。その為、お母さんは離婚もできないの。その日から私たちの元に毎日、借金取りがやってきて地獄のような日々が始まったわ。そして追い詰められた私たちはもう死ぬしかない。そう思っていた時に、大きな愛で助けて下さったのが亮様なのです。そんな亮様にご恩を返すために、私ができる唯一のこと、それが亮様に嫁いでいくこと、これ以外に方法がないのです」
そんなことが沙織さんに起こっていたことを知らずに俺は反対をしていたのか。そして、反対していた自分を恥じた。
「ごめん…」
俺が沙織さんに言えた唯一の言葉だった
「わかったな。恵」
「はい」
こうして、学園のアイドルが俺の母親として一緒に暮らすことが決まったのだった。
後で、わかったことは、その借金取りは、金の為なら違法行為でもする連中だそうだ。特に瀬里奈さんはかつてアイドルをしていたらしい。それほど売れていなかったそうだが、元アイドルという肩書であっち方面のビデオで売ったりする連中だそうだ。そして、彼れの狙いは沙織さんだったらしい。
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