GOD be with you(神があなたを守ってくれますように。)

佛漢

第1話GOD be with you(神があなたを守ってくれますように。)

春の兆しが見えた日。

WBCが優勝した日。

学生が終わりを迎える日。

世の中と僕の転換点。

そんな日の出来事だ。


「ブルン。ガチャ。」エンジン音が車内に鳴り響く。


「こんな朝まで遊んだの久しぶりすぎだろ。」加古山雅喜が薄暗い空を見つめながら、感傷的になっていた。


「こんな事って社会人になるとできないんだろうな、、、1週間後には40年続く労働が始まると思うと鬱だよな。」宮家敬之が運転席で、これから始まる労働に嘆いていた。


僕達3人全員、1週間後に就職する。労働が嫌な訳でない、この社会的地位のあるニート生活が無くなるのが嫌なのだ。


そして僕には更に嫌なことがある。僕はこの街を去るのだ。そして、友人や好きな人とも会う頻度が極端に減る。僕にとっては最大の難敵なのだ。


「おい敬之。マイナス発言は禁止。」僕は思考を停止する選択を選んだ。


「だってよ。蓮ちゃんはこの街離れて会えないし、雅喜は俺と休みが逆だし。寂しいに決まってんだろ。」斉藤連子-僕の名前だ。


僕達は敬之に言い返す術も無く。黙ったまま車をすすめた。

何故か未来が不安に思えてくる。

多分、敬之も雅喜もそう思ってるのだと、何故か意思疎通ができた。


「もーすぐ。蓮ちゃんの家着くよ。」敬之が眠たそうに言う。


「うわ。寂しさ増してきたよ。」


「まぁこっちに帰ってきたらさ、みんなで集まろうよ。一生の別れじゃないんだしさ。」


「うわ。その感じやめろって。じゃーさ。二人には渾身のバイバイで俺を見送ってほしい。」僕は寂しさのあまりよくわからない発言をする。


「渾身のバイバイってなんだよ。」


「俺だってわかんないよ。けど聞いてよ、バイバイってあっさりすぎない?なんかもっとこう良いもんない?最後に相応しいさ。」僕は思うのだ。GOOD BYEでもあっさりなのに、そこから派生したバイバイはもっと淡白な挨拶ではないのかと。


「ちょっと考えるわ。」敬之も何故か乗り気になる。


「こんなんどう?グータッチとアツイ抱擁の後に、俺たち親友だぜ!とかわ?」


敬之の発言に僕達二人は顔を見合わせ、同時に

「ないな。アホだろ恥ずいわ。」と罵声を浴びせた。


「なら、雅喜が言って。」


「そーだな。あえて何も言わないとかわ?またいつでも会えると信じる系で、いつもよりあえて淡白な別れ方とか」


「なんか、逆にダサいわ。」僕は少し冷めたような口ぶりで却下した。


「こんなの言ってはなんだけど、GOOD BYEてどうゆう意味?」突然敬之が言い出した。確かに、直訳すると良いBYE。意味がわからない。


「ちょっと調べるわ。」僕はGoogleで調べた。


「なるほどね。そーゆー事だったんだ。良い事思いついた。」


「なに?教えてよ!」


「着いてからのお楽しみで。」僕はそう言い残すとまた無言の時間が続いた。


「もー着きますよ。」敬之がそう言うと僕の家の前まで車を停めた。


「早!もー着いたの!お別れじゃん。もーみんな頻繁に会えなくなるの寂しすぎだろ。けどさ、けどさ絶対また集まろう。約束だぞ!じゃーな連ちゃん!バイバイ」雅喜が少し寂しそうに僕と握手しながらお別れを告げる。


「蓮ちゃんー!!!また絶対遊ぼ!帰ってきたら連絡してよ!じゃーねぇーバイバイ!」敬之も僕と握手をして、ドアの鍵を外した。そして、二人は僕の挨拶を期待して待っていた。


僕は外を出ると大きく手を振った。僕はいつもより、ある思いを込めてそして、大きな声で二人を見送った。


「敬之!雅喜!バイバイ!」


二人はキョトンした表情だが、僕の笑みは絶えなかった。

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