第11話 二本目の包丁 🔪🔪🔪🔪🔪🔪

 渦巻と風見鶏は街を歩く。

 目指すは街中にある有名クレープ店。美味いと有名であり、インスタ映え人気もあり、いつも長蛇の列が出来ている。


「今日も人が多いですね」

「そうだね、渦巻くん。それに、なんだか見られている気が」

「そりゃ、先生が美人だからですよ」


 複雑そうに渦巻は頬を掻く。事実、風見鶏は街を歩けば注目の的だった。老若男女問わず話しかけられたのだ。

 そうして並ぶこと十分。ようやくチョコクレープを買えた。渦巻は、近くの公園へ向かい、空いているベンチを探した。

 噴水の前に空いているベンチに腰掛ける。


「ありがとう、渦巻くん。いただきます」

「いえいえ、先生が幸せなら良いんです」


 さっそく渦巻はクレープを一口。ほんの少し齧っただけなのに、チョコとクリームがあふれで出てきた。渦巻も風見鶏も口の中が幸せで満たされていく。


「う~ん、美味しいっ。このクレープは何度食べても美味しいわぁ」


 この上ない笑顔で風見鶏はクレープを絶賛する。同意する渦巻。


「これほど濃密で甘いとは思わなかったですよ」

「でしょう~。もう一個食べたいくらいだもん」


 クレープを堪能した風見鶏は、ベンチから立ち上がった。


「どうしたんです、先生」

「うぅ……もう一個、買ってこよっかなって」

「マジですか!?」

「限定のさくらクレープも食べておきたいから。大丈夫、自腹で買ってくるから」

「えぇ……」


 風見鶏は走って行ってしまった。

 取り残された渦巻。確かに、風見鶏がクレープ好きなのは理解していたが、おかわりはこれが初めてだった。


 諦めて待つことにした渦巻。しかし、茂みから音がした。

 そこから現れる人影。



「おっす、渦巻くん」

「え……佐藤さん!? なんでここに」

「ごめん、ちょっと気になって」

「見ていたのか」

「まあね」


 佐藤は、包丁を取り出して渦巻の胸部に突き刺した。



「…………え」


「ごめんね、渦巻くん。君を欲しがってるのは風見鶏先生だけじゃないんだよ。残念だけど、またやりなおして」


「…………は? ……がはッ」


 渦巻は大量の血を流し、死んだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る