第9話 先生も同じなの Side:風見鶏

 わたしは彼の秘密を知っていた。

 いつどこで記憶が蘇ったのか分からない。彼を殺すと、わたしも同時に別の世界にいたのだから。


 彼は……渦巻くんは、わたしを幸せにしようと必死だ。


 でも、彼が他の女の子を気にしてしまう以上……わたしはそれが許せない。だって、記憶がずっと続いているから。


 それに心の底に住む魔物がわたしを狂わせる。その正体は分からない。克服もできるものではない。なぜか水のように湧き出てしまう。


「……先生?」


 ふと、渦巻くんの声がした。

 そういえば今は部屋の中だった。


「……ご、ごめんなさい、渦巻くん」

「ぼうっとなんて珍しいですね」

「そ、そうかな。それより、これからデートしましょうか」

「デ、デートですか」

「うん。まだちゃんとしてないから」


 渦巻くんは照れくさそうに「はい」と返事をした。彼のそういう素直なところも好き。でも一歩外を出れば、彼は異常にモテた。

 同じクラスの女子が通りかかると、話しかけられていた。


「あれ~、渦巻くんじゃん。こんなところで会うなんて奇遇だね」

「佐藤さんか。偶然」

「って、先生も。なんだかビックリです」


 わたしは、佐藤さんと挨拶を交わす。けれど、彼女は渦巻くんに視線を合わせて楽しそうに談笑していた。…………なんで邪魔をするの。


 許せない。

 許せない。許せない。

 許せない。許せない。許せない。


 許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。

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