第8話 二週間後の俺 Side:渦巻 🔪

 悪夢を見た気がする。

 俺は汗だくになって起き上がった。周囲を見渡すと、先生の部屋だった。俺はまた刺されたのか。

 どうして……。

 あの時は出会ったばかりだったのに刺されてしまった。女子と話したから? たったそれだけで?


 信じられなかった。


 今までは上手くいっていたのに。

 もしかして、先生の想いが強すぎるのか? それとも別の要因があるのだろうか。


 なんにせよ、俺はもっと注意する必要があるなと思った。



「……先生は」



 立ち上がりアパートの中を捜索する。

 先生の姿はない。出掛けているのか? というか、今は何日なんだ。……記憶がハッキリしない。


 重い頭の中――玄関の扉がゆっくりと開いた。



「あ、渦巻くん。起きたのね」

「せ、先生……」

「なに驚いてるの? さあ、約束通り外へ行きましょ」

「え……」



 俺は腕を掴まれ、外へ連れ出された。いったい、俺は先生と何を約束したんだ?

 ……見る限り、恋仲っぽくはなっているようだが。てか、同棲もしているようだな。なるほど、途中からスタートってわけか。


 こういうケースも何度かあった。

 ただ、この場合は記憶に混乱が見られるので……困ったものだ。


 だけど、スマホを見ればいい。


 えっと……今日は先生と出会ってから二週間後か。同棲を始めて一週間経過したころだ。


 気づけば俺は公園に連れ出されていた。



「ねえ、渦巻くん。今日はなんだかぼうっとしているね?」

「ちょ、ちょっと寝起きなもので。先生こそ、機嫌が良さそうですね」

「うん。だって渦巻くんと同棲を始めて一週間経ったから。毎日がとても楽しいよ」


 先生の笑顔は素敵だ。

 俺の疲弊しきった心を癒してくれる。


 痛い目にはあったけど、先生とは同じ時間を過ごせる。俺は先生がいれば、それでいい……。だから、痛くたって構わない。

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