第7話 油断から生まれた未来 🔪🔪🔪🔪🔪🔪🔪

「どうしたの、渦巻くん」


 包丁を持ったまま渦巻の目の前に立つ風見鶏。しかも笑顔で。それが余計に恐怖を煽った。


「……せ、先生。まさか」

「ん~? 先生の顔になにかついてる?」


 渦巻は焦りながらも風見鶏が正気であることを理解した。


(な、なんだ、気のせいか……)


 彼はホッとして胸を撫でおろす。

 あの違和感は気のせいだったと、渦巻はそう納得することにした。


「いえ、なんでもないです」

「そう。じゃあ、もう少し待っていてね」

「はい、先生」


 風見鶏は笑顔で応えた。

 これで一安心だと渦巻は思ったが、それはとんだ思い違いだったのだ。未来は常に変化し、あらゆる要素が複雑に絡み合う。故に、想定外の出来事イベントも発生する。


 それが今だった。



『――――グシャッ!』



 肉を切り裂く音が響く。

 完全に油断していた渦巻の腹部に包丁が突き刺さっていたのだ。ぽたりと血が滴り、床が赤く染まる。


 鮮血が流れ、彼の生命を奪う。



「…………ッ! せ、せんせい……なぜ」

「渦巻くん、先生を愛していないの?」

「え……」

「教室にいるとき、女子と楽しそうに話していたよね」

「……そ、それは……そうだけど、少し話しただけだよ先生」

「ダメ。許せない。先生以外の女子と話すとか許せない」

「そ、そんな……」



 それが今回の敗因ということなのかと渦巻はそう思った。しかし、今まで女子と会話するだけで風見鶏が暴走することはまずなかった。なかったが、今回はそれが起きた。渦巻の油断だった。


(くそっ、先生の愛がどんどん重くなっているとでもいうのか……)


 どくどくと流れる血。

 意識は遠のき、渦巻は倒れた。

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