第4話 先生を助けたあの日 Side:渦巻 🔪🔪🔪🔪🔪

 Side:渦巻


 また・・風見鶏先生が着任した。

 俺にとってはこれが三十三回目の出来事だ。先生はこちらに視線を送り、俺もまた先生を観察していた。

 この明日には、俺と先生は付き合う関係になる。それが運命だ。


 きっかけは、朝の登校だった。


 いつものように横断歩道まで向かうと、そこに風見鶏先生の姿があった。


 彼女は確かに青信号で渡っていた。だけど、信号無視した車が突っ込んでくるんだ。

かれかけたところを俺が助けた。



「……先生、大丈夫ですか!」

「…………っ。う、渦巻くん……助けてくれたの?」

「当たり前です。俺はいつだって先生を……いや、そんなことより、ケガはありませんか?」


 俺は先生を立たせた。

 手足は震え、怯えている。

 少し視線を移せば、トラックがお店に突っ込んでいた。いつものことだけど、これだけは変えられない運命だ。


 だが、おかげで俺は先生と出会えた。


「本当にありがとう。渦巻くん」

「いえ。ケガがないようで良かったです」

「あ、あの……渦巻くん」

「はい?」


「ううん……一緒に学校へ行きましょうか」

「そうですね」


 俺と先生の関係は、一日にして一気に縮まった。

 当然のように恋し、惹かれ合い――求め合った。先生は、美人で優しくて、俺のためにお弁当も作ってくれた。


 幸せな日々が続いていく……はずだった。



 教室でぼうっとしていると、クラスの女子が話しかけてきた。藍坂という美少女だ。普通なら接点なんてあるはずのない女子だが、なぜか話しかけてくる。



「ねえ、渦巻くん。先生と仲いいよね」

「そうかな。普通だよ」

「なんか怪しいよね」

「さあ……?」


 俺は淡々と答える。

 こうすれば先生が変貌せず、俺の命を奪う心配がないからだ。


「付き合ってないの?」

「知らない」

「じゃあ、付き合ってないんだ」

「……」

「ねえ、渦巻くん。……まあいっか。この前、先生を助けていたところ見かけて、カッコ良いなって思ったんだけどね」


 微笑む藍坂は、背を向け女子の輪へ戻っていく。……なんとか凌げたな。

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