「嘘でしょ…彼女が眞な訳、だって、だって彼女はもう何十年も前に事故で亡くなったはず…。」

「なに?それは初耳だったな。」


桂龍けいりょうはラインの引かれた名前の隣に(人間界では死亡)(本名 綾瀬眞)と書き加えた。


「まさか驚いたよ、いかづち様が人間だなんて。」

「雷様…?」

「俺達の世界じゃあ綾瀬眞は雷様って言われてる。彼女がいる場所は雷鳴が止まないからだってな。」


「雷様は仙人であった我達をも使役できる程の力の持ち主だ。そんな奴を調べてるなんてお前らは何を企む?」



 小さな体からは想像もつかないほどの威圧感。やはり元仙人は違う。


 「俺達はある事件を追っている。知ってるか?華の山高等学校女子高生変死事件っていうんだが。」 

「あぁ知ってるぜ、テレビで散々騒いでたからな印象に残ってる。」


「俺達はこの事件にカタマリが大きく関与してることに気付いた。俺達はカタマリを生かしてはおけないと思った。だから始祖のアダムを突き止めてカタマリという存在をこの世から抹消するんだ。」


「成程ねぇ…。」


1人と1匹はしばし考え込んでから話し始めた。


「俺達も協力させてくれ。」


「本当に!」

「あぁ、ただし俺達とお前たちでは到底太刀打ちできない相手だろう。だから有能な助っ人を用意しないとな。」


そう言って桂龍はニヤリと笑う。


「その助っ人ってのはどこにいるの?」

「ここにはいない、別のところにいる。今から案内するから付いてこい。」






細い路地裏をただ歩く。10分程経つのだろうか。

静まり返った空気の中七星が口を開く。


「ねぇ…その助っ人ってさ人間なの?」

「人間って言えば人間だしカタマリって言えばカタマリだな。」

「どういうこと?」

「混血なんだよ彼女は。カタマリと人間のミックス。だから人間以上の戦闘力を持つしそこら辺のカタマリなんかよりもずっと強いぞ。」


話しながら歩いているといつの間にか路地裏を抜けて大通りにある中華料理店の前にいた。


「ここだ。」

「ここってただの中華料理店じゃない。ここに助っ人がいるって言うの?。」


七星の話を聞いているのか聞いていないのか桂龍と嶺秀は店の中へと入っていった。


「いらっしゃーい!!!何名?」

「よぉ俺だ、久しぶりだな余暉よき。」


「おぉー!久しぶりじゃないか桂龍!それに嶺秀も!元気そうで何よりだ!」


調理場から出てきたのはガタイの良い男だった。

余暉と言う男は俺達を見て何やら探っているようだった。


「お前達は桂龍の知り合いか?」

「えぇ、私は星影七星。彼は朝比奈陽風。ある事件を追っていてそれに桂龍も協力してもらってるの。」


「そうかそうか!桂龍にも嶺秀以外の仲間ができたんだな!俺は余暉だこれからよろしくなー!」


そう言って大きな手で2人の頭をガシガシと撫でた。


「それでお前達は何の用でうちに?」

「あぁそのことなんだが、翠花ツィファを少しの間借りたいんだがいいか?」

「そういうことなら全然構わないぜ!今呼んでくるな。」


余暉は天井に頭を何度もぶつけながら裏へと入っていった。

 しばらくして1人の少女を連れてきた。

白を基調としたチャイナ服にはカモミールの模様が裾あたりに並んでいる。

白色の頭の上にある黒色の大きなお団子ヘアはパンダを彷彿とさせる。その少女を始めてみる人皆口をそろえてこう言うだろう。

『まるでパンダみたいな娘だ』と


「桂龍が少しの間お前を連れていきたいんだとさ、聞き入れてくれるか?」

「分かった。」

「ありがとな、じゃあコイツ少しの間借りるわ。」

「おう!また飯食いに来いよな!」


1人の少女を連れて店を後にした。




「おっとコイツの紹介がまだだったな。コイツは翠花ツィファさっきまで話していたのはコイツのことだ。」


「私は翠花…よろしく。」

「コイツは少し人見知りなとこがあってな人前で話すのが苦手なんだ。」

「そうなのね、アタシは…。」

「言わなくていい。」


きっぱりと言われてしまった。


「あなた達の事は…さっき余暉との会話を聞いてたから知ってる。」

「翠花は目と耳がいい。だから戦闘面に限らず探索面でも役に立ってくれるはずだ。」


「桂龍…翠花は何をすればいいの?」


桂龍は俺達がアダム、彼らの言う雷様を倒そうと考えていることそれに翠花が協力してほしいことを話した。彼女は思いの外すぐに了承してくれた。


「翠花は…その雷様をやっつければいいんだね。」

「あぁ期待しているぞ翠花。」

「うん…分かった。翠花…頑張ってみるよ。」


こうして俺達のチームに桂龍と嶺秀そして混血の翠花が仲間に加わった。

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