同じ

 「お待たせしました!星影ですッ!」

息を切らせながら七星が言う。俺は随分と離れたところからその声を聞いた。

「あぁ!星影さん!まだ警察は来ていません今のうちに調べてください!」

校長室から出てきた開田が言う。場所は屋上だというので俺たちは急いで階段を駆け上がった。


 屋上への階段を上り扉を開けるとそこは凄惨なものだった。異様な臭気が周りを包んでいる。そしてまず最初に目についたのはやはり神田緋伊羅と佐伯璃依紗の遺体だった。

「これは…。なんなの。」

七星が2人の遺体へと足を進めた。俺はそれに着いていく。

 彼女たちの遺体には見覚えがあった。転落死のような姿、そして本来目がある場所に埋まったボタン。笠野燈鞠が遺体で見つかった時の状況と同じ。ここから推測できるのは2人を殺害した犯人と笠野燈鞠を殺害した犯人はだということだ。

「七星…、何か分かったか?」

返答はなかった。ふと横を見ると七星の顔は見たことのないくらいに青ざめていて手は小刻みに震えていた。

「大丈夫か?体調悪ければ無理しなくていいぞ?」

「え、えぇ少し休ませて。」

 そういうと七星は座り込んで持ってきたいつも持ち歩いているビニール袋に嘔吐してしまった。俺は教員に言って水が入ったペットボトルを持ってくるように言った。


 「ほら七星、水もらってきたからこれで口ゆすげ。」

「ありがとう。いやぁ、ああいうのって映画とかで耐性ついてるって思ってたのになぁ作りものじゃないってなると結構キツイね。」

そういいながら水を口に含みビニール袋に吐き出した。

「陽風はあんまりキツそうじゃないね慣れてるの?」

「いやそんなことは無い俺だって今結構堪えてる。でもそれよりも衝撃の方が大きいのが事実なんだよな。」

「お~陽風も分かった?」

「あぁ俺は彼女たちが倉田葵を操ってるカタマリだと思っていたからな。それにこの遺体は笠野燈鞠と同じだ。」

「当ったり~。」

そういって立ち上がった七星は背伸びして俺の頬を人差し指でつんと触れた。

「そう言うってことはお前はとっくに分かってたって所か。」

「えぇ当たり前でしょ。これでも大学生なんだから。」

そう七星は自慢げに話す七星の瞳はキラキラと光っているような気がした。


 「んで何か感じたこととかはないのか?」

「いいえ、びっくりするくらい何にもない。何にも感じないのよ。アンタこそなんか視えたりした?」

「いや、こっちもさっぱりだ。」

「そうよね~こうなると本当に分からなくなっちゃうな。」

話しているうちに遠くの方からけたたましいサイレンが聞こえてきたので俺たちは退散することにした。

 「星影さん大丈夫ですか?ご気分が優れなかったようですが…。」

「もう大丈夫です。お見苦しいところをお見せしました。もう警察も来てしまうので私たちはこれで失礼します。しばらくはこちらに顔を出すのを控えようと思います。連絡がありましたらメールか電話してくれると助かります。」

「そうですね事態が落ち着いたらまたいらっしゃって下さい。」

俺たちは教員たちに会釈した後学校を後にした。

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