君
『これは、シーニーの言った通り暗号だ。だがな暗号でもたくさん種類がある。今回はシーザー暗号と呼ばれるものだな。カエサル式暗号、シフト暗号なんて呼ばれ方もする。』
そういってディスコードに七星からのメモを映す。このメモには、
「EXKKFKEXHROXQX.」
そう書かれている。
『お前みたいに暗号に詳しくないやつが見てもただ不規則に並んだアルファベットの羅列にしか見えないと思うが、僕みたいな情報屋は一発さ。』
『シーザー暗号はアルファベット順に並べた時3つ前の文字に変換することで成り立つ暗号だ。例えば、BEDを暗号化するとYBAになるみたいな。』
『詳しいな。』
そう言うと、まぁなと自慢げな返答が返ってきた。
『んでさっきのメモにこの暗号を当てはめると~。こうなるわけよ。』
ディスコードに七星のメモとファクターが即席で作ったであろう暗号を解読したものが比較されるような形で映し出された。
『これは面白いぞ~!』
相当興奮している様子だ。どれ俺も見てみるか。
『これは…。』
俺は息をのんだ。ファクターが解読した内容は
「HANNINHAKURATA.」
となった。日本語に直すと、
「犯人は倉田。」
まさかこの前の襲撃は倉田葵の仕業なのか。だが何のために。
俺たちはアイツと協力関係にあるはずじゃ。この文の意図は?分からん。
『驚きだよ。ファクター、感謝するよ明日また病院に行って聞いてみる。』
『あぁ分かった。またなんかあったらいつでも連絡してくれよ。』
『感謝する。それじゃ。』
通話を切る。
なんだこの依頼やっぱり何かおかしい。どうして倉田が俺たちを殺そうと企む?
それに倉田は華奢だ。あんな大きな金属パイプを軽々と持てるアイツとは似ても似つかない…。
いや違う。確か倉田は柔道部、普段から筋力は鍛えているのか。
人は見かけによらないな。ただ、倉田が犯人かどうかはまだ確証がない。
七星が退院したらもう一度学校へ出向く。
「おい、七星。」
「あっ今日も来たんだ。あのメモ分かった?」
「あぁ俺の知り合いの情報屋に頼んで解読してもらった。」
「おぉ~すごいねその人会ってみたいなぁ。」
「俺も直接会ったことはないからどんな人かわからない。というかそもそも会おうとしないだろ。」
七星はそっかあ~と言ってあっさり諦めた。
「で?あのメモを読んだ感想は?」
「あぁ、結論から言うと衝撃だった。彼女がそんなことするような人間だとは思えない。彼女は俺たちと協力関係にあるはずなんだろ?」
「分かんないよ~。こっちが勝手にそう思ってるだけで倉田ちゃんはそんなことないかもしれないじゃん。」
そうか。こっちの勘違いの可能性もあるか。彼女の事は彼女自身に聞かないと分からないか。
「七星、いつ退院する予定だ?」
「お医者さんが言うにはあと2日くらいだってさ。」
「そうか。なぁ退院したらまたあの学校行ってみないか。今度はちゃんと装備整えて。」
七星はまっすぐ俺の方を見る。今までにないほど真剣な顔つきだ。
「分かった、いいよ。じゃあ私に何かあった時のためにこれ、持っておいてよ。」
そう言って俺に手渡したのは、俺の父親から譲り受けた空色の勾玉だった。
「いいのかよ。俺がこれ持ってたらお前何もできないだろ。」
「いいよ、まだ退院しても身体は本調子じゃないと思うし。それにきっと陽風はアタシよりも強い力を持ってる気がするの。」
「強い力?なんだそれ?」
「アンタは祓い師の息子なんでしょ?きっと急にカタマリが視えだしたのは力が解放されつつある状況なんじゃない?」
「それは…そうかもしれないが…。」
「だから!アンタが持ってて!」
「分かった…それじゃあな。」
言いくるめられてしまった。結局、
さて、後2日。どうやってパイプのアイツを対処するかが難所になるな。
アイツの身のこなしは俺じゃ対処しきれない。まるであれは、野生にいる猛獣のようだ。
そんなやつどうやって。
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