彼のこと
「どうだった?アタシの事よく知れた?」
「おかげでよく分かったよ辛いと思うのに話してくれて。」
彼女は照れ臭そうに微笑んだ。
この話の中で1つ気になった部分がある。「ハル」という男のことだ。
身体が弱い母さんの見舞いに行くといつも5歳の時に居なくなった俺の父さんの話をした。
『陽風の眼はお父さんそっくりねぇ青空みたいにきれいな青。陽風が生まれた時ねこの眼を見たお父さんがお母さんに言ったの。この子はきっと素晴らしい子になる!僕が保証してやる!ってね。』
と言ってはいつも俺の頬を撫でた。
実際に俺の父親と七星を助けた祓い師の男が同一人物なんだとすれば…。
「さっきに話の中で気になったことがあるんだが、」
「どうしたの?」
「いや。お前を助けた祓い師の男の事なんだ。その男、俺の父親かもしれない。」
え!?と言って七星は驚きを隠せない様子だった。
「まだ本当に父親なのかは分からない。だけどよく母親が話してくれたんだ。父親の事。その話と男の特徴が似てるんだ。瞳が青色だとかが。」
そうすると七星が納得した様子で話す。
「あ~確かに。陽風の眼も青いよねぇ。ずっとハーフだと思ってたんだけど違うの?」
「母親も父親もどっちも純日本人だ。父親が純日本人なら瞳の色の理由がややこしくなるな。それにその男は片目だけだったんだろ?」
「うん。確か左目だったかな。」
「あまり詳しいことは俺もよく知らないんだ。父親の顔もあまり覚えてないし。」
「そうなの?なんで?」
「俺が5歳の時に急にいなくなったんだ。母親曰く仕事のせいであまり家には帰らない人だったらしいけど。」
彼女は少し考える素振りをしてから言った。
「分からないなら聞いてみればいいのよ!アンタのお母様に!」
「母さんに、か。確かにいい案だとは思うが俺の母さんは今入院中だ。あまり簡単に他人が出入りできないと思うぞ。」
「何言ってんの?誰もアタシが行くなんて言ってないじゃない。」
そうかそういうことか。
つまり俺が母さんの見舞いに行くついでに父さんのことを聞いてこいってことね。了解しましたよ。
「母さん。最近プログラミングの仕事が忙しくて会いにこれなくてごめん。調子はどう?」
「あら、陽風久しぶりね。最近は調子がいいわお医者様も今のところは大丈夫だって。」
「それはよかったよ。今日は母さんに聞きたいことがあってきたんだ。」
母さんは話してごらんと言って俺の手を握った。
「父さんの事なんだけど、最近気になってさ。もっと詳しいこと教えてほしいんだ。」
少し驚いたような風にした後母さんはいつもの穏やかな顔に戻って話し始めた。
「父さんはね陽風のことが大好きだったんだよ。いっつも家に帰ってくると陽風につきっきりでねほんとにずっと。」
「面白い人だね。」
「でもねお父さん最初に会ったときは、まったく笑わないし目も切れ長だからちょっと怖かったわ。まさか結婚するなんて思いもしなかったけどね。」
母さんはクスッと笑った。
「母さん。父さんは仕事であまり帰ってこなかったって言ったけど、仕事は何をしてたの?」
「お父さんのお仕事?陽風が生まれる前に教えてくれたんだけど確か…。」
母さんの記憶は朧げのようで少しの間沈黙が流れた。
「思い出したわ!祓い屋って言ってた気がするわ。」
祓い屋。やっぱり七星を助けた男は俺の父親だったのか。とすると俺にも父さんと同じ力があるのかもな、カタマリが視えるのも遺伝なのか?
「父さんの名前ってなんていうの?」
「
七星が言っていた名前と一緒だ。
「でも母さん、父さんって母さんの方に婿入りしたんでしょ?結婚する前の名字ってなんだったの?」
母さんはお父さんの事そんなに知りたいの?と言いながらも俺の質問したことにはちゃんと答えてくれる。嬉しい限りだ。
-大学生の時のお父さんの名字は-
【星影】だったわ。
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