星の隠し事
物心ついた時からアタシの周りには男の人が多かった。
星影組は星火町でトップクラスのグループだった。それでアタシをさらって組を乗っ取ろうと企むチンピラが多かったから。
だから外で遊ぼうにもたった1分外に出ようにも護衛がついて回る生活だった。
父さんはお前を守っているためだと言った。
母さんは父さんの言うことを聞かなきゃダメとしか言わなかった。
だけど星影組はもう皆足を洗って昔みたいなことはしないのに…。
幼稚園は2年通った後小学校に進学した。護衛の人は行きと帰りに2人ずつついていた。
友だちとの付き合いも制限されたからアタシはクラスでどんどん孤立していった。
そのまま中学校に進学した。中学生は小学生より繊細だ。
周りとちょっと違う行動をしただけで、孤立するリスクは大いに高まる。
小学校で孤立していたアタシだ。中学校でも友人関係は制限されたからますます孤立するし組長の娘という話もどこかから漏れたようでその話は中学校中に広まった。
そのうちアタシは学校に行けなくなった。いけないといっても教室に行けなくなったから保健室で過ごしていた。
アタシの人生は孤独。この言葉が一番ふさわしい。
アタシが自分の力に気づいたのは高校に入ってから。
中学に行けなかったアタシを気遣って母さんが通信制の高校を進めてくれた。
その高校は通信なので出席日数は少ないが少ないために1回の登校が大切だった。
高校の雰囲気は異様だった。校舎は真新しくてきれいだったがどんよりとした空気が拭えなかった。
そこにはバケモノ、いわゆるカタマリが多く存在した。
でもソレはアタシだけにしかわからないようでソレにびくびく震えているのはアタシだけ。
周りから見たらその姿は異様だっただろう。
ある日の帰り道、その日は補習があったから帰りが遅くなったので急いで帰った。
護衛の人はついていたが1人と少なかった。
学校の校舎から出たのにソレはいた。目の前に立っているってわかった。
アタシは驚いて尻餅をついた。アタシが護衛の人に呼び掛けても分からないのでぽかんとするばかりでまともに話を聞いてくれなかった。
襲われる、目をギュッと瞑った。その時だった。
知らない男の人だけが目の前にアタシに背を向けて立っていた。
青みがかった長い黒髪は1つに結ばれていて、腰には勾玉が5,6個ほど下がっていた。その人が振り返ったとき私は驚いた。
彼の片目は青空のように青かった。護衛がアタシから彼を引き離そうとした。
でも屈強な護衛でもびくともしなかった。彼の服は体型の分かりづらい黒の和装。和装からちらりとのぞいた腕は白く枝のように細かったのを覚えている。
「怪我はない?」
低い、か細い声。でもどこか安らぎを感じる優しい声だった。
「うん。大丈夫。それよりさっきのは…。」
「あれかい?あれが視えるとは。君は特別な子だ。」
優しく微笑んで見せた彼の顔はとても優しかった。
「いや、視えないけど。」
「それじゃあどうやってアレに気づいたんだい?」
「感じたの。視えないけど。そこにいるって感じるの。」
彼は驚いたような顔になってからもう一度優しく微笑んだ。
「そうか、君は感覚がとても優れているんだね。これはとても特別なことだ。」
「それに君にはアレを祓う力があるようだ。でも君の感覚はまだまだこんなもんじゃない。」
彼は自分の腰に下がっている勾玉を1つちぎって手渡してくれた。
「これはきっと君の才能を最大限に引き出してくれる。」
「…ありがとう。」
「試しに祈ってみな。」
「祈るって、アタシそんなやり方分かんないよ。」
彼は突然アタシの手を握った。
「大丈夫。これを強く握って次にどうしたいかを強く思ってみて。」
「うん…。」
強く握った勾玉は短い間光ってそして消えていった。
彼の顔がぱぁっと明るくなった。
「やっぱり!君には才能があるよ!あれを祓うことのできる特別な人間だ!」
「これは君にあげよう。僕はもう力がなくなってきている。だから後を君に託そう。君が世界で唯一のカタマリを祓える祓い師だ。」
「カタマリ?」
「さっきのアレの呼び名さ、僕が勝手にそう呼んでるだけだけど。それじゃあまた会えるといいね特別なお嬢さん。」
「ねぇ!!最後にアンタの名前を!!」
声を張り上げて、彼を呼び止めた。
「僕の名前か…僕の名前はハルとでも言っておこうかな。」
そういうと彼は瞬き1つで消えてしまった。
アタシはいまだに彼のことを探しながら祓い屋をしている。
「ハル」彼の青空のような青い片目をアタシはまだ忘れられないままでいるみたい。
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