事情聴取②

 笠野燈鞠かさのひまりに対するイジメの主犯格の事情聴取が本格的に始まった。


「まずは、イジメの動機について教えてほしいんだけど。」


「燈鞠は成績もよくて運動もできる。ほんとに何でもできるから

 皆から注目されてたし先生も期待されてたんじゃないかな。」


主犯格の1人である佐伯璃依紗さえきりいさは言う。こちらの方は

まだまともだったようだ。


「だからそんな燈鞠さんが羨ましかった。そう言いたいのね。」


こくりと首を縦に振った。

「燈鞠を徹底的にいじめて優等生ぶらせないようにしようと思った。最初は陰口を言ったりする程度だったけど人間って怖いねウチたちが嫌ってるって知ったクラスメイト達がみんな燈鞠に対して冷たくなってウチたちに着いてくるようになった。」


七星は黙って彼女らの話を聞いている。

この事情聴取とカタマリに何の関係があるというのだろうか。

七星曰くカタマリというものは生まれるために必要な言霊の

の度合いによって見た目や強さ、物理攻撃が通じるか通じないか等々が変わるらしいのでそれを調べているのかも。


「それがだんだんエスカレートしていって靴を隠したり、デマを学校中に流したりした。でも唯一燈鞠にずっとついて回るやつがいたからもう燈鞠と関わるなって半ば無理やり引き離した。そのあとすぐに燈鞠は学校に来なくなった。で来なくなったちょっと後に燈鞠が亡くなったって知らされた。」


 なんてひどい話だ。皆よりも要領がいいだけでイジメを受けて唯一の

友だちも引き剥がされた。こいつ等を俺は許しては置けない。

七星は怒っているのか、はたまた悲しんでいるのか分からない表情をしている。


「そっか。その燈鞠さんの唯一の友だちは倉田葵さんよね。」

「どうしてその名前を。」

神田は少し戸惑っている様子だった。


「彼女アタシたちの協力してくれたの。」

「お前たちの様子や周りの様子を詳しく鮮明に教えてくれたぜ。」


もう下校時間はとっくに過ぎている。夕日が部屋に差し込んで、あたりを橙色に染めた。

時計の針が17時を指している。教員が時間が…。と伝えると彼女が時計を見て

「ごめんね!こんな時間まで付き合わせちゃって!」

「いや、大丈夫っす。じゃあ。」


2人は用意を済ませるとそそくさと校長室から出て行った。


「よしっ!アタシたちもそろそろ帰ろっか!」

「あ、あぁ。」


 閑散とした学校の廊下に二つの影が伸びる。

俺は聞こうか迷ったが勇気を出して聞いてみることにした。


「な、なぁ。」

七星は、ん?と反応した。

「あの時から気になってたんだが…。」

「何?言ってみてよ。」


少し間が空いて口を開いた。

「七星が



言ってしまった。彼女が俯く。しまったこれは禁句だったのかもしれない。

2人の間に沈黙が流れる。


 「ぷっ、アッハハハハハ!!」

突然彼女が笑い出した。ぎょっとした。彼女がこんなに大笑いしているのは

初めてだからだ。

 

「アハハハッ!はぁ~。こんなに笑ったのいつ振りだろ!アハハ!」

「ほんとだよ、アタシの名字はだもん。」

「それじゃあ七星の父親って…まさかあの!?」

「あっ知ってるんだ、そうだよアタシの父さんは星影拳ほしかげけん

母さんは星影友里亜ほしかげゆりあ。母さんの名前は知らなくても父さんは知ってるみたいだね。でもね陽風アタシたちはもう悪いことはしないって決めたの。だから星影組っていうのは名前だけ今はボランティアとかをしてるの。」


「この話もっと後になったら話そうと思ったんだけどね…。」

「仕方ないなぁ。分かった教えてあげる。」


彼女は深く息を吸うと、過去について話してくれた。


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