事情聴取①

 俺たちは翌日、倉田葵くらたあおい笠野燈鞠かさのひまりへのイジメに加担するように脅しをした。

佐伯璃依紗さいきりいさ神田緋伊羅かみたひいらに事情聴取を行った。彼女らを連れてくるのも一苦労で校長も言っていた通り、すぐに殴り掛かってきたので七星がそれを抑え込んで連れてきた。


「なんでウチらが連れてこられなきゃいけない訳!?」

「マジありえないんだけど~。」


佐伯は舌打ちをして、神田は貧乏ゆすりが止められない。


「すぐに終わるから…。」


 あわあわと戸惑っている女教師を部屋から連れ出した後、ソファに腰かけて

話を始めた。


「初めましてお2人さん。アタシは星影七星。こっちは朝比奈陽風。」


「こいつ見るからに陰キャじゃんwwww。ウチだったらぜってー

 関わりたくねーwww。」


俺のことを馬鹿にしてる声が鼓膜をつんざいた。あぁやっぱり俺は

こんなやつなんだな。そう実感した。


 「そんなこと言わないでくれる?陽風はアタシの大事なパートナー

なんだけど?またおんなじこと言ったらアンタたちを二度とそんな口叩けないようにしてやるわよ。」


七星が2人を睨み付ける。それを聞いた2人が七星を睨み付けた。

七星が俺を守ってくれた?まぁ少し気恥ずかしいが、悪い気はしないな。

 

「話を戻すよ。去年にアンタたちのクラスの笠野燈鞠が亡くなったのは

さすがに知ってるよね?」


2人がゆっくりと首を縦に振る。


「んでそのことについて色々と聞きたい。昨日倉田葵っていう子に

聞いたの。アンタたちが燈鞠ちゃんにイジメをしていたって。それはほんとなの?」


佐伯が口を開く。  


「そう。してたよ。アイツのこと嫌いだったし。」

「じゃあこのイジメの主犯格も分かるよね?」


「何言ってんの主犯格はウチとひいらんだよ~。」

 

 イジメで人を殺しておいてその飄々ひょうひょうとした態度には

反吐が出る。七星もそれは同じなようで眉間にしわを寄せている。


「そっか。教えてくれてありがと。でもアンタたちが主犯格ならこのまま帰すわけにはいかなくなるね。」

「早くしてよ。これから彼氏とデートなんだけど。」

「言っとくけど、りいさの彼氏は結構ワルだからあんま調子のんない方が身のためだよ~。」


「あっそ。でもアタシにその脅しは効かないわよ。アタシそんな人は

もう慣れっこだもの。」


「はあ?強がってんじゃねーよ。お前みたいな奴がりいさの彼氏みたいな

人と関わったことねぇ癖に?」


七星の顔に笑みが浮かぶ。それほど余裕ということなのだろうか。


「アンタたちさ、って知ってる?」

「だってウチの彼氏そこにいるんだもんしらねぇ訳ないじゃーん。」


「アタシのパパそこの組長なんだよね。」


 一瞬にして空気が変わった。組長の娘?そんな話一度も聞いたことが

ないから驚いた。2人の額に汗が滲んだ。


「う…嘘言わないでよ…。どうせウチたちに早く真相を吐かせる為の脅しで

 しょ?」

1番に声を上げた佐伯の手が震えている。横で神田がうんうんと頷いている。

だが七星の態度は変わらず2人の眼を見つめている。その威圧感に気圧されたのか2人は黙ってしまった。


「嘘なんかじゃあないよ。その彼氏さんから聞いたことないの?組長の娘が

 半年前から行方不明になってるってこと。」


「まさかゆう君が言ってたお嬢ってア、アンタのことなの…?」


「アタシそんな人知らないけどそうなんじゃない。すぐに話を理解してくれる人アタシ好きよ。分かったらアタシたちの質問に素直に答えること。」


とても分かったと言わんばかりに2人はもげる勢いで首を縦に振った。

 とはいえ事情聴取はこれからが本番になるだろう。

 なるべく手短に済ませたい。

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