華に潜むバケモノ
「たっだいまー!どう?
「まぁな一通りは。今回依頼を受けた高校は去年女子生徒が
変死体で見つかったことで色々と騒がれてた事はお前も知ってんだろ?」
「うん知ってる。あれでしょ、両目にボタンが埋まってたっていう変死体。」
「あぁ。よく知ってんな。どこから入ってきたんだそんな情報ニュースとか
じゃ取り上げないだろ。」
「大学で話題になってるからね。アタシもそれは友達から聞いただけだから
ホントかどうかは分かんないけどね~。」
現在時刻16時。そろそろ出かける時刻だな。
「よしっ!行こっか!例の高校に。」
俺の住むマンションから徒歩30分弱。私立華の山高等学校に到着した。
玄関で遭遇した教師に「校長に用がある。」と伝えたらすんなり通してくれた。
校長室に通されそこで待つよう言われたので、
死体で見つかった
時間が経ち校長ともう1人、こちらも黒髪を1つに縛ったおとなしそうな少女が俯きながら入ってきた。
「いや~今回は依頼に応えてくださりどうもありがとうございます。
私が校長の
さぁ、と校長に言われてオドオドしつつ頭を下げて
「はっ初めまして…
彼女も依頼に関わる?よく分からんが話を聞こう。
「私が祓い屋をしております。星影七星と申します。彼が私と一緒に活動をしております。ほらっ。」
「あっえと、どうも俺が、いや僕が星影さんと活動をしている
朝比奈陽風って言います。」
「どうぞ、お2人さん疲れたでしょ。ささ座ってください。」
「ありがとうございます。では失礼します。」
「では早速ですが依頼の内容は、学校に出現するバケモノを祓ってほしい。
でお間違えないでしょうか?」
「はい…最近になってソレが視えるようになってきまして…。」
「分かりました。そのバケモノについてもう少し詳しくお話し頂けますか?」
「ソレは去年から出てくるようになってきまして…でも視えるのは私だけなんですそれはたまに現れては生徒を襲うんです。襲われた生徒はもちろんソレは視えないので襲われているのに気付かないんです。それでその生徒はその日の内に何か大きな怪我をしたり、病気にかかったりするんです。」
それを話している校長の顔が青ざめる。よほど気を使っているようだな。
だが今までの話の中に隣に座っている彼女が出てこないのはなぜだ。
「そうですか。それはお気の毒です。しかしもう大丈夫です。この件につきましてはこの星影と朝比奈が何とかして見せましょう。」
「おぉ!それはよかった!!」
「しかし1つ気になることが…。」
七星が校長の隣にチョコンと座っている倉田葵に視線を向ける。
「彼女もそのバケモノがみえるのですか?」
「あっいえ彼女は視えないのですが彼女が何かを知っているようなのです。」
「そうなんですね。どうぞ何でも話してみて。葵ちゃん。」
七星が優しく語りかける。俺にはそんな顔しないくせに。
「あっえっと先生が言ってるそのバケモノって燈鞠ちゃんなんじゃないかって思ってるんです。」
やはり出てきたか笠野燈鞠。彼女は何かしらに関わっている可能性が高いな。
「どうしてそう思うの?燈鞠さんとはどういう関係なの?」
「燈鞠ちゃんは小学校からの幼馴染で亡くなったって聞いた時にはすごくショックでした。燈鞠ちゃんはバレー部のエースでした。私は柔道部に入っていて怪我した時以外にも私のことをすごく気にかけてくれました。それに、燈鞠ちゃんは勉強もできるし顔も可愛いので皆からの注目の的でした。」
やっぱ笠野燈鞠は優等生だったんだな。充実した学校生活のようだがどうして亡くなったのかは分からないな。
彼女の手が震えている。何か辛い事でもあったか?もう少し聞いてみるか。
「で…でも亡くなる2ヶ月前から燈鞠ちゃんに対する周りの扱いが変わってきました。」
来た。俺の1番聞きたい情報だ。笠野燈鞠は本当にイジメにあっていたのだろうか。
「もう少し詳しく聞かせて。」
「はい…ひっ燈鞠ちゃんが登校してきたら必ずクラスの皆が集まってくるはずなのにその日からクラスの皆は燈鞠ちゃんをにらみつけるようになりました。まるでゴミを見てるかのような目で…。それに明らかに燈鞠ちゃんを避けるような行動も増えました。彼女が話しかけようとすると皆コソコソ何かを話しながら離れて行くんです。燈鞠ちゃん自身もそれは気づいていたと思います。それがさらにエスカレートしていって皆は燈鞠ちゃんを1人ぼっちにさせる為に私に脅しをかけてきたんです。」
「脅しを?」
「はい。今すぐ燈鞠ちゃんとの仲を断ち切らないとお前も同じ目に合わすって…それを聞いたら怖くなっちゃって。被害者面してるのは分かってます。私も燈鞠ちゃんに対するいじめに加担していたって…。その次の日から私も燈鞠ちゃんに関わることをやめました。彼女が私に話しかけられないようにしました。そんなことが2か月続いたその月の終りに燈鞠ちゃんは亡くなりました。」
彼女の瞳に涙が溜まる。
「だから…そんなことをした私たちのこと…恨んでるんじゃないかって…。」
彼女が自分の顔を抑えて泣いてしまった。七星が背中をさする。
「辛かったね。葵ちゃんが全部悪いわけじゃないからそんなに思い詰めないで。分かった。あなたのクラスでイジメがあったのね。」
葵が泣きながら頷いた。校長はその話を聞いて冷や汗をかいている。
イジメのことなどまったくと言っていいほど知らなかったのだろう。
「葵ちゃん。イジメの主犯っていうか燈鞠さんへのイジメを命令していたのは誰かな?」
「グスッ…。えっと主犯格は分かりませんけど…。私に脅しをかけたのは、
同じクラスの
佐伯璃衣沙、神田緋伊羅か覚えておこう。後々何かに使えるかも。
「その子達は葵ちゃんに脅しをかけただけで直接燈鞠さんに害を与えていたわけではないの?」
「分かりません…。燈鞠ちゃんは1ヶ月もしないうちに学校に来なくなったので。」
確かにショックだろうな。最近までずっと周りにいたクラスメイトが急に自分に対して危害を加えるなんて。
やっぱり彼女はイジメが原因で心を病んで命を絶った可能性が拭えないな。
「分かりました。私たちが化けもの調査に加えてその子達にも話を聞いてみるわ。」
「ありがとうございます…。どうか燈鞠ちゃんの思いを晴らしてあげてください。」
「私達に任せて!きっと燈鞠さんの無念を晴らしてあげるから!」
「構いませんね。開田さんあなたの依頼のほかにも倉田さんの依頼も受け持つということは。」
「え、えぇ。構いませんが…彼女たちに関わるのは辞めた方がいいかもしれません。彼女たちは素行がとても悪いうえに手がすぐに出るタイプなので…。」
「大丈夫です。私幼稚園の時から空手やってるので!では失礼します。」
そう言い残して七星は足早に校長室を出たので俺もそのあとに続いて校長室を出た。
「なぁ。あの女生徒の話どう思う?」
「どう思うって言われても…ムカつくとしか言いようがないよ。」
七星は拳を力いっぱい握った。七星の意見には俺も同意する。
イジメという行為そのものが最低極まりないことであるのは、事実だ。
気分が悪くなってきた。
最悪なことを思い出してしまった。
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