渚のアウトサイダー彼女

アルル

第1話「終わりの始まり」



2023年2月18日。

1人の男子高校生は高校から家へ帰っている最中であった。

「帰ったら宿題かー・・・やだな」

愚痴を漏らす彼の名前は安曇渚。

「大体宿題の量もおかしいし、1日で終わらないよ。さすが自称進学校だな」

とさらに愚痴を漏らす。

と言うのも26日連続で宿題が出ていているせいか文句の1つでも2つでも言いたくなったのだろう。

「はぁ・・まあしゃあない」

そう無理やり納得させた。

とその時。

「うっ、ごめん。よそ見してて」

肩がぶつかった。

ぶつかった方を見ると彼より10cm以上低い身長で年齢も中学生ぐらいの少女であった。

「いいえ、私こそ」

その少女はそう言ってまた歩き出してどこかへ去った。

「あの娘なんか変な雰囲気だな。なんと言うか普通と言うか・・独特の」

うまく言い表せない違和感を感じたが直ぐに

それは消えた。

「まっいっか。帰って宿題だ」

再び歩いて家へ向かった。



翌日、渚は家への帰路を歩いていた。

そして家の扉の前へついた。

そのままドアノブへ手を触れようとしたが、

それはできなかった。

「・・何してんの」

何故なら彼の目の前に昨日肩がぶつかった少女がいたのだ。それもまるで当たり前かのように。

「おかえりなさい、渚さん」

その少女は悪気がない目と口調でそう言った。

「・・ん?ん?待て、何がどうなってんの。

何故、何故、何故?何故か教えてくれ」

困惑が止まらず明らかに喋り方がおかしいが

その少女に質問した。

「私に質問しないでくださいよ!」

「いやするだろ普通。とりあえず通報な」

何故か逆切れする彼女をよそ目に通報しようとするが遮られた。

「まあまあそう言わない。一旦家に上がりましょうよ」

「だからなにお前」

淡々と話しながら家へ入っていく彼女に彼は非常に不快な気分になった。

家に招かされたかのように自分の家に入った渚はその少女を椅子に座らせた。

「とりあえずいいたいことは星の数ほど有るけど。まずいくつか質問するから答えて」

「だから私に質問しないでくださいって」

「答えろさもないと殺すぞ」

「スミマセン、答えます」

そして質問を始める。

「まず名前を教えて」

「神鳥暦です」

「何歳?」

「今年で多分16歳です」

「誕生日は?」

「知らんな」

「ふざけてないで答えろ」

「マジですよ」

と色々突っ込みたいこともあるがその後の様々な質問をした。

分かったことを整理する。

少女の名前は神鳥暦。16歳。

これだけだ。

「これしか知らないんなんてまるで記憶喪失みたいだな」

「いやまるで最初からなかったかのようですね」

なんだかキナ臭さを感じたが今はそれどころではない。そんなことよりもっと大事なことがある。

渚は一番質問したいことを質問した。

「暦・・だっけ、じゃあ君は何故僕の家のドアの前にいたのか答えて」

「んー、家がないからですかね」

家がないから僕の家の前にいた?

「家がないからって僕の家に住むってこと?」

「はい、だって渚さんぼっちそうな顔してるじゃないですか」

「は?」

渚はその返答にイラッと来た。

まあ1人ではあるが。

と言うのも渚の両親はよく宇宙行ったり海外行ったりと旅行に行っているから大体1人でいることが多い。

「確かに1人だけど」

「だから、私のようなうら若き美少女が

住んであげると言う訳です・・あだーっ!!」

渚は暦を思いっきり殴った。

そして馬乗りに乗って殴る。

殴る。殴る。何度も。

「ぶぼっ!だ、だめ・・ごっ!」

「一旦黙るまで殴るわ」

とにかく殴り続ける。

無礼すぎる彼女に彼は我慢ならなかったのだ。

「ごほっ!がはっ!ら、らめぇ・・」

目に涙を浮かべる彼女をみて殴るのを止めた。

「あのさ、言っとくけど女子中学生をホームステイさせるほどうちは金ないし、金あっても絶対にお前のような奴はお断りだよ」

一旦深呼吸して彼はそう言った。

「全く・・犯罪ですよこんなん。しかも私のような美少女を年頃の男子が殴るなんざ暴行罪ですよ」

「黙れ不法滞在女子中学生」

「いや、16歳ですが?」

そう返した暦は傷口を舐めながら立ち上がる。

「まあまあ渚さん、今日から私が一緒に同棲しますから、いっぱい愛情注ぎますから」

「嫌だよ」

「私を追い出したんだったら暴行罪で訴えますけどいいですか?」

暦は自身の傷を見て自身に大義があるのを知って渚にそう脅迫じみたことを言う。

「うっ・・」

「さっ?どうします?人間やめますか?それとも追い出しやめますか?」

暦はさらに脅迫を続ける。

渚は全身から汗が出てくる感覚がした。

「・・好きにしろ」

「わーい!大好きですー!!渚さーん!」

暦は満面の笑みで叫びながら彼に抱きつく。

「うぉっ!離れろ!」

不意に抱きつかれた彼は離せと暦に叫ぶ。

「なんかいける気がします!」

「いいけど、恥ずかしいよ!」

渚は半強制的に結局彼女をホームステイせざるを得なくなったのであった。 

自業自得だと彼は心底己を責めるのであった。


翌日、渚はベッドで目を覚ました。

「はあ嫌な夢を見たな」

そう言いながら自分の体を起こす。

そして1階へ降りてリビングへ入る。

「って、そこに寝てたのかよ」

リビングのソファーで寝ている暦がそこにいる。

「むにゃむにゃ、あぁん、そこは」

「はよ起きろ不法滞在者」

渚は寝たふりをする彼女に踵落としを思いっきり喰らわせた。

「うぎゃー!何するんですか!」

「お前が悪い」

「ぐぬぬ・・折角寝ていたのに踵落としをするとは。なんたること」

「とりあえず僕朝ご飯作るから大人しくしてな」

「むぅ・・私は渚さんをまるで臣下と魔王の関係かのように愛してるのに」

「なんだその無茶苦茶な関係は」

彼は台所に向かう。

しかしそこで問題が起きた。

「僕料理どころか家事できないんだよなぁ」

そう彼は家事がマジで苦手である。

ただし幼い頃からたこ焼きだけは出来る。

「・・アイツから離れたいから早くするか」

とクロックアップしたいがそんなんできる訳ないので普通に作った。

「ほら、出来たぞ」

と言ってわずか2.4秒で食卓まで走ってきた。

「味は悪くないと思うから」

「渚さんなら美味いに決まってるじゃないですかヤダー」

と煽り気味の答えに殺意が湧くもなんとか堪えた。

「味はどう?」

「んー、、マズイですねぇ」

「じゃあ食わんでよし!ボッシュート!」

と彼は暦から皿を取り上げた。

「いやいや、冗談冗談!ジャパニーズジョーク!!」

「お前一体マジでなんなんだよ」

とふざけたジョークをかます彼女にひどく

イライラした。

その後彼は着替えの準備をしている最中、

妙な視線を覚えた。

「ねぇ、今から下着脱ぐんだが」

「ええ、どうぞ」

暦は渚の方をガン見している。

「とりあえずこっから出て行ってくれ」

「嫌です」

「目潰すか腕斬るか選ばしてやるぞ」

「すんませんした今すぐ出ます」

そう恐喝すると暦は渋々出て行った。

「全く、変態かよアイツは」


彼は制服を着て登校の準備をした。当然のごとく気分は最悪だ。

「じゃあ、行ってくる」

「いってらっしゃいませー」

扉を開けて学校へ向かった。

「はー、、出て行け言ってるけどなんやかんや僕は暦を住ませてるしなんだか自分の気持ちが分からないよ」

彼は1人呟きながら登校した。


学校へ到着した彼は教室へ向かった。

教室は2年2組。

「宿題は...うわっまったくやってない」

昨日の出来事のせいで全くと言っていいほど

宿題が終わってない。

「おはよう、安曇くん」

1人の女子高生が話しかけてきた。

「おはよう」

「どうしたの、そんな朝からまるで説教を

食らったかのような顔して」

「なんやかんやあったの」

「あーね、なんやかんやね」

「あーねやめてくんない?」

「あ、アンチだったんだ」

そう会話を交わしているクラスメイトの

名前は宮月唯香。成績は優秀で真面目。

それだから非の打ち所がない・・・とはあまり言えない。

何故か青二才呼ばわりされるのを非常に嫌っている。嫌っている理由は誰も知らないそうだが。なおそう呼んだ奴は病院送りにされたと言う噂が多々ある。

「そういや今日までの宿題あったけど終わったの?」

「・・あっ」

彼は思い出した。宿題があったことを。

暦のせいで全くと言っていいほど終わってない。

「すまん、唯香様見せてください」

「仕方ないなぁ、はいどうぞ」

彼は唯香に宿題を写されて貰った。

今までで14回だ。はっきり言って神様だ。

偉そうに思えるがそれは仕方あるまい。

「はいじゃー、席についてねー」

なんの前ぶりもなく担任が来てしまった。

だが渚は何も驚くことはなくまるで何事も

なかったかのように宿題を移し続けた。

「えーっと、、欠席は1人・・・名前は...えっと読めない・・」

「とうごうみなとと読みます」

「ああっ!そう!いやー、私鳥頭だし!」

と鳥頭を自慢するこの女教師は彼の担任だ。

名前は星川美沙。

年齢は30代。アラサー独身である。

ある1人の欠席した生徒・十河湊斗の名前が

読めないなど教師としては大問題の人物である。渚はいつになったらクラス全員の名前が読めるんだろうかと心底思いながらひたすら宿題を移していた。

「はいじゃー、今日の連絡は」

美沙が連絡を話しているにもかかわらず渚は

黙々と移していた。

彼女は生徒の内職に注意しないのだ。

理由は私も学生時代内職をしていたからと。

「甘いとこだけは先生のいいところだよ」

ボソッと彼はつぶやいた。

テストで点さえ取れればいいと言う理論は

まさにその通りなのである。

「はいじゃあ終わり。」

朝のホームルームが終わりを告げる声がしたのを皮切りにクラスは一斉に賑やかになる。

「宮月さん、ありがとうございますマジで」

「はいはい」

唯香に宿題を見せて貰った後渚は授業が始まるまでひたすら寝た。


その後6限まで授業が終わり歩いて家へ帰った。

「ただいま」

「おかえりなさい」

ドアを開けると暦が出迎えてくれた。 

しかし彼はそれを無視し私服に着替え、

リビングへ向かった。

「いやー、このアニメはオモロいですな」

とお菓子を食いながらアニメを見ている暦を

発見した。

「同居してるんだったら何か家の仕事手伝ってよ」

「あー、私奉仕系苦手系少女なんですよ」

「なんだその新しいジャンルは」

「てか洗濯物を入れたりはできるじゃん」

「いやー、入れようとすると爆発するんで・・」

「意味がわからねぇよ」

訳のわからんことを話す彼女は無能だと断定した。

彼自身は前々から察していたそうだが

ここまでとはと頭を悩ました。

仕方がないからか彼は洗濯物を入れたり

と家の仕事を全てした。

「言っとくけど長居は出来ないからね」

「えー、嫌ですよ」

「じゃあなんか働いたり家の仕事手伝って」

「分かりましたよ」

彼女はしぶしぶ承諾した。


こんなやり取りの翌日。

渚は朝起きると隣に誰も居なかった。

普段なら暦が隣で寝ているのにだ。

「さては・・出ていった?」

唐突に思いついた考えを口に出しつつ、

階段を下り、いつものリビングへ向かった。

「暦、いる?」

おはようより前にそう言いながらリビングへ

入った。

「あっ、渚さん!おはようございます!」

そこにはテーブルを拭いていた暦がいた。

「あっ、うん、おはよう」

「ここで渚さんにとってもいい知らせがあります!」

「何?」

まるで時間改変者のような言い回しでそう

言ってきたのだ。

「祝え!今ここにこの神鳥暦、邪道を貫く

 少女、ジャークメイドになりました!

 今歴史の始まりですよっ!」

「・・ちょっと何言ってるかわからない」

まるでどっかの魔王を祝う忠臣のように意味のわからない発言をする暦に困惑した。

「渚さん、いっぱい子供作ったり愛情を

育んだりして新たな歴史を刻みましょうね」

「キモいこと言わないでさっさと消えろよ」


メイドらしくないメイド..だからジャークメイド。渚は朝から情報過多で胃もたれを引き起こしかけたのであった。









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渚のアウトサイダー彼女 アルル @kousuke9616

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