第67話 腹黒さに気付く。
「ど、どうしたのかな、圭ちゃん。ひとり? 珍しいね」
子供たちはお互いの家の鍵を持たされていた。
実際それくらい絡みが少ないふたりだった。
「ごめんね急に。ちょっといいかな?」
「あぁ、ちょ、ちょっと待って! 片づけするから!」
ちらりと見えた部屋の隙間から見えた感じ、まったく散らかってないが、それでも
「ごめんね、お待たせ~どうぞ」
焦ってベットを整えたのと、軽く空気を入れ替えたくらいだった。
「お邪魔します。やっぱ、
「そ、そうかな~ありがと。その……石林さんはいいの?」
「あ……っと、その気にしてるみたいで『行ってあげて』みたいな?」
「あっ、そっか。バレてる感じなんだ、なんかカッコ悪いよね……えっとね、なんていうか落ち込んでるの見られたくないって言うか……そんな感じ」
「ごめん」
「圭ちゃんに謝られると深刻さが増す……とりあえず座らない? それとも早く戻らないと?」
いくら絡みが少ないとはいえ幼馴染。
それに気付いた
「ははっ……私、振られちゃう感じかなぁ」
緊張に耐えかねた
「ごめん」
「えっと、なにがダメだったかなぁ。なんて言うか長い人生じゃない、後学のためっていうか……教えてくれたら助かるかな? 大丈夫『それちゃんとするから!』とか言って困らせたりしないし」
精一杯元気な声で言うものの、後半は頑張ってもしぼんでしまう。
「その、なんて言うか……正直に言うとよくわからないんだ」
「よく、わからない?」
「うん、許嫁っていうのもだし、付き合うみたいなのも」
「そうなんだ。あっ、いや私もわかってるかと言えば怪しいかも」
「そうなんだ……ごめん、オレきっと子供なんだ。ずっとサッカーばっかで……それがほら、出来なくなったじゃない。だから勉強頑張ってみたり――」
「許嫁とかも頑張ろうって?」
「うん、ごめん。頑張ってどうこうするもんじゃないのに……
肩が触れる距離で座りながら
(肩が触れてるけど……それは嫌じゃないのかなぁ……振るっていうのはそういうの全部嫌だからじゃないの? 違うの?)
この際だから
(おかしい……)
「圭ちゃん。その、この先どうするの? えっと……私との許嫁、辞めちゃうってことだけど……
「いや、そういうのはその……決めてないっていうか、ごめんね」
ここに来てようやく
単に許嫁という仕組みにうまく馴染めなくて、息苦しさを感じているのだと。ということは、
「でも圭ちゃん。きっと圭ちゃんのおじさん達もだし、ウチの親も心配して私以外でいいから誰か許嫁にしたらって、しつこいと思うよ? それって圭ちゃんがしようと思ってる、指導者の勉強とかの邪魔にならないか心配」
追い込まれた
「もしよ? もし圭ちゃんが私のこと嫌いだとかなら仕方ないんだけど、そうじゃなくて『許嫁』とかがよくわからないし、女子サッカー部のコーチするとかで忙しくて、私のことかまえないのが気になってたりだったとしたら、気にしなくていいよ。そりゃ、寂しいけど……我慢するし……」
「でも、我慢とかさせたくないっていうか。それなら
そしてこの言葉で
(これは完全に
「私。圭ちゃんの側が一番自由かもです(きゅるん!)」
「それでも、これから女子サッカー部と関わるかもだから、そうなると女子だらけだし……嫌な思いするんじゃないかなぁって。石林先輩みたいにふたりで会うこともあるだろうし」
背に腹は代えられない
「それならどうかなぁ。私と圭ちゃんの許嫁関係は『お試し』ってことで。だから、圭ちゃんが誰かと会うとかでも、口出ししないし……その人がいいって言うなら、その時は私、身を引きます。だから頑張らせてください!」
この話を圭から聞いた
(我が妹。したたかね……油断できない)
気を引き締める
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