第64話 知らない一面に気付く。
(やっぱ、マズくない?)
圭の家にたどり着いたはいいが、ここまで来て石林
(正直、許嫁さんってどういう関係なのかよくわからないけど、私がお邪魔なのだけはわかる! ここは一目散に帰るべきでは⁉)
心はすでに回れ右をしていたが、言い出せない。言い出せないまま背後から声を掛けられた。
「圭ちゃん。お帰り、早かったね。えっと、そちらは……きのうの?」
「あっ、はじめまして! えっと……申し遅れました! 私、石林
咄嗟に頭を下げる
きのう見かけた
(圭ちゃんと……仲良くしてるんだ…)
『ざわり』どころか『ざわざわざわ』しまくるのだが、圭の前で泣いたりキレたりして良妻賢母の看板を傷つける訳にはいかない。
「こちらこそ。私、吉沢
何とか
しかし、ヤラれっぱなしは性に合わない「仲良くしてもらっている」とクギを刺す。笑顔で。
(わ、私って…浮気相手だと思われてたりして……ど、ど、どうしよ⁉ 違うとか言うほど仲良くなってから時間経ってないし……でもでも、仲良くなりたくないわけじゃないし……でもなぁ)
そんな迷いを知ってか知らずか、いや知らんだろ。無神経にも無関心にも圭は
「石林先輩。オレの部屋2階上がってすぐだから。なんか、飲み物持って行くんで先に部屋に行ってて」
「あっ⁉ あぁ…わ、わかった。うん……」
そして事もあろうに圭は
「
そんな感じで涼しい顔して言った。こうなると、言い返すことは出来ないし、部屋に入るのも根性がいる。いやいや、家に上がり込むのさえ並の精神力では無理だ。しかし、ここは引けない。ごり押しはダメなのはわかっているが大人しく引き上げるのもダメな気がした。
考えがまとまらないまま、
「どうしたの。なんか忘れ物?」
その手があったとばかりに、
「そう! えっと……圭ちゃんのお部屋にもしかしたら参考書忘れたかも…いや、問題集かも! でも、お邪魔ですよね?」
「ん……別に。
「あっ、うん!」
***
「ん? 石林さん。いらっしゃい」
圭の部屋で当たり前に
「吉沢…さん?」
「ごめんね、いま更新中で手が離せないの。どっか空いてるとこ座って待ってて」
見た感じゲームとかではなさそうだ。
(相変わらず美人……)
圭以外
「圭と一緒だったんでしょ?
「あ…っとヨッシーはちょっと別行動です」
「そうなんだ。珍しいね、あの子が圭と他の女子が一緒なのに首突っ込まないの」
「そうなのかな…」
「そうよ、きっとあの子よっぽど、石林さんのこと信用してるか、好きなんだね」
(何してんだろ? そう言えば更新とか言ってた)
「吉沢さん、話しかけて気散らない? 大丈夫?」
「ん……大丈夫な範囲でしか話せないけど」
「そうなんだ。更新って言ってたけど…」
「あぁ、そういえば言ったよね、さっき。私ね小説書いてるの。ネットで。それがもうびっくりするくらい誰も読んでくれない! ほんとなんのために書いてんだろね(笑)」
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