第60話 打ち明けたい悩みに気付く。
予定の時間を少し過ぎていた。圭が
部活が盛んな
「あれ…女子サッカー部だろ」
「そうだな、雨でもないのに体育館か。めずらしいな」
「うん、しかもレギュラー組じゃなさそうだな」
「体幹トレーニングでもするのか?」
「かもな…ん? 誰か来たな…ん? あれって……」
『パン、パン、パン!』
圭は
「はい、集合! ボードの前に集まって座ってくれ」
「「「はい!」」」
『B2』のメンバーは渡辺
バスケ部男子のうわさ話は続く。
(誰? 新しい外部コーチかなんかか? それにしても若いだろ)
(いや……俺アイツ知ってる。同じクラスだ……)
(えっ⁉ 1年生⁉ いや、でもなんで1年生男子が女子サッカー部のコーチみたいのしてる⁇ 男子サッカー部か?)
(おい、冗談は止せ。ウチの弱小男子サッカー部が女子サッカー部さまの指導なんてありえんだろ、でも川守って帰宅部だったよなぁ……)
男子バスケ部員のチラ見は続く……
***
「知ってると思うがオレが川守圭です『よろしくお願いします』なんて話をするつもりはない。ここに来るまでBチームのキャプテン
圭は一度言葉を切りほんの少し息を吐き出して全員の顔を見た。全員分の退部届と聞いて渡辺
(B、Cチーム全員ってことか……ちっ、そこまで思い詰めてたのか……)
渡辺
「今回の試合が難しいことはわかっている。全員が勝ちたいという気持ちなのもよくわかる。相手が強いことはわかっている。そして自分たちが弱者だと無意識のうちに認めてることも」
圭は両手を広げながら全員に語り掛ける。顔を上げ目を逸らさない者、うつむいたままの者、顔は上げているが焦点が定まらない者、色々だ。
「何がその自信の無さに繋がっている?
「えっ?」
直江田
「何が足りない?」
「その……実績…です」
「
「わ、私ですか……球際の強さだと思います」
「そうか。じゃあ……
『鬼の守備』と呼ばれる渡辺
「ん……根性と気合」
圭は渡辺
「石……
「経験による自信です!」
「そうだ! さすがオレのピボーテ! オレたちがAチームに足りてないものは経験による自信。それを勝ち取るために必要なのは根性とか気合いだ」
得たり。圭がもっともフットボールに重視するひとつが心の持ちようだ。どんな名手でもメンタルが充実してないと十分な結果を引き出せない。すると
「吉沢
「はい、私は単純に誰より多く点数を決めてやるって気持ち」
「そうだ!
Bチーム心の声。
(今の絶対褒められたいからだよ……)
(石林先輩が「オレのピボーテ」って呼ばれたからだよ!)
(『私もすごいもん!』みたいな? 自己主張半端ない…)
纏まりかけた意見だったが、一枚岩とまではいかない。いまだに顔を伏せたままの者もいる。圭は腕組みしたまま意見を求める。
「
「それ、根性論ですよね。実際小林キャプテンとか神崎先輩とか止めれる気がしません。私フィジカルもだしアジリティ(
半ば吐き捨てるような言葉に渡辺
「――『
「11月2日『
しかし
「でも、自分ら……この1年ランニングしかして来てません! ちゃんとした指導なんて受けてません! 元々実力差があるのにどうしろって言うんですか⁉」
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