第59話 闘志に気付く。
ざわり。
胸を搔きむしられるそんな感覚と共に圭は走り出していた。おかしい、普通じゃない、こんなの、普通じゃない! そんな焦りに突き動かされるように圭は走り出していた。
「
急に声を掛けられた背中は肩で荒い息をしていた。ゆっくりと振り向いて圭の顔を見ると、少し目元をしかめながらも笑顔を見せた。
「なに、川守くん。時の人が私に何か用?」
「膝。痛めてるの?」
「あっ……わかる? 私さ、中学の時十字靭帯やっちゃってて。術後1年てとこ。大丈夫よ、なに? そんな顔しないで、ちょ、ちょっと⁉」
圭は無理やり麦倉に自分の肩を貸し、支えながら近くのベンチに座らせた。
「ジャージの下、
「安心してください!
「あの、
「いやいや、とんでもない! むしろ乾いた心に沁みるぜ(笑) ちょっちさ、ムキになってんの」
「立花?」
「イッツオールライト! よくわかったね。あっ、川守くんの担任か。そりゃそりゃ。あのバカ、小林総監督がね、休みだってのに聞かないの。昨日試合出たちゅーの! 練習ならまだいいよ?
「そんなの無視したら?」
「そうしたいけど
「やっぱ腫れてるなぁ……アイシングしとかないと」
「えっ? 川守くん、いまなんとおっしゃいました? この寒空でアイシングと? もうそれ拷問でしょ? いやいや、なんでソックス脱がしてアイシング待ったなしに追い込む⁇」
「でも痛みが出たら病院から何て言われてる?」
「まずは休養。アイシングして、教えてもらった感じに膝を手のひらで圧迫する……あれ? これ語るに落ちるってヤツ?」
「大丈夫です、オレタオル持ってるんで」
「いや、私が冷水に浸される心構えが大丈夫じゃないんだけど……聞かないよね~(泣き)」
***
「基本さ、根性論なの。おたくの担任」
圭は
「そんな感じだな」
「そもそもサッカー経験なしで
『婚活しろよ、立花!』はBチームの合言葉になりつつあった。膝のケアをひと通り終えた圭に
「なんにしてもオレから立花に言っとく」
「あ~あ。そういうのいいかな。私も川守くんもフットボーラでしょ? 口よりも結果で語ろうぜ?『B1』か『B2』が勝てばいいんでしょ? 簡単じゃん! それにわかりやすい! それと私の愚痴を聞いてくれた川守くんに、スペシャルサンクス。これ
圭は少し集めの封筒を渡された。
「これは?」
「B、Cチーム全員の退部届。ここで川守圭をコーチに迎え入れるか、問題提起しないと近い将来
「圭。自信ないの?」
振り向きもしないで圭は
「オレの『9番』がピッチにいる限り、平気だ」
その声に、言葉には誇らしさまで感じる。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます