第58話 嫌な予感がすることに気付く。
沿線沿いのマクドナルド。
「私らってオールシーズン、アイスだよね」
向かい合うボックス席でセットで注文した同じアイスコーヒーを手にして、
「そうだな、さすがにこの時期、家じゃホットだけどな。氷入れるのめんどいし、家だとめちゃ薄くなる」
「うん、私も。でもなんでマックだとアイスコーヒーなんだろ」
「ん……さっさと済ませて練習いかないとのクセじゃないか?」
「あぁ……それだ。朝練あるあるだ。また一緒に朝練いくんだ……夢みたいだ」
そういって
「
ドレッシングをかけシェイクしたサラダをテーブルの真ん中に置くと
「わ、私は野菜は大丈夫! ほら、ちゃんとハッシュドポテト食べてるし……」
「うん。心配するな。オレもポテトは食べてる。野菜取らなきゃだろ。オレも我慢するからお前も食え」
「う……お金出してまでの苦行をなぜ…」
圭は
「
「なに?」
「Bチームとはどうなん?」
「あぁ……あんまし知らない。私入部以来Aチームだし、編入組だから。グランドが別ってのもあるけど。ごめん、情報ないわ」
「いいよ、別にAからの4人のことは何となくわかったし。追々でいいや」
「ふふっ。圭、やる気じゃん。うれし」
「間接的に嫌な思いさせるかも」
「うん。仕方ないよ、サッカーに戻った圭が女子になんて目もくれないの、今はじまった事じゃないし。まぁ、あの子は知らないだろうけど。いいと思うよ? 圭、指導者目指すんでしょ? どの道、指導者を目指してサッカーにどっぷりな生活が待ってるなら、慣れるか――」
「慣れるか?」
「辞めるかじゃない? 許嫁を。私はいいと思うよ、別に。そうなっても私は変わらないし、たぶん
「関わるんなら?」
「普通に考えてまわり女子だらけでしょ、その辺も慣れないと。圭だってライン来るたびやきもち焼かれたらしんどいでしょ。私は平気よ」
「あぁ……それな。でもオレが
「圭さぁ。そこ気にしなくていいよ『選んだ』んじゃなくて『選ばされた』んだから。普通に考えておかしくない? 世界は半分たぶん女子。それを3人からだけしか選べないなんて理不尽。誰も選ばずにひとりで生きる権利もあるじゃない? まぁ、私を選んでくれたら『しれ~』っ知らん顔としてるけど(笑) いいのよ、大人に責任取らせれば。それとも、なに? 圭。
それはないかと
「さぁ、やりますか。新しい門出ってやつを」
「おかえり、圭。フットボールの神さまがお待ちかねよ」
***
「うわっ、なに、あんたらそのペアルックな感じ…見てる私が軽く汗かくじゃない」
渡辺
「いいでしょ? ナベ先輩もどうです? 先輩も寄せてきてユイットでも組みませんか?」
「音楽性の違いですぐ解散しそうだと思うのは私だけだろうか」
田中アキもしっかり渡辺
実のところ圭は石林
田中アキが軽口を叩き、渡辺
その時。少し離れたグランドで腰に手を当てて、明らかに足を庇うように走っては止まりを繰り返す女子を見つけた。後ろ姿には『
「石林先輩。彼女は?」
「あぁ……Bチームのキャプテン
圭は聞いておきながら返事が出来なかった。足の庇い方が普通じゃない。いや、見たことのある庇い方だ。『ざわり』そんな感じの嫌な予感が胸を掻きむしった。
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