第39話 自己主張だと気付く。
「なんなの、これ!」
早乙女女学院キーパー
秋月は差し出された
「なによ、ん……?『ナショナルトレセン辞退は持病か?』って、
「いや、さっきから
「川守……圭? あるよ、弟が同じ歳で『めっちゃうまいけど最近聞かない』って言ってたけど? アイツなの? 女の子とイチャイチャして練習怠けたから下手になったんじゃね? モテ期なんて都市伝説よ、きっと」
「秋月、ちゃんと記事読め『肺に持病がある』って書いてるだろ」
「ほんとだ……書いてるね。ん……ねぇ、
秋月はべそをかくように目を真っ赤にして我慢した。知りもしないのに泣くなんて失礼だという気持ちだけで我慢した。自分の弟と重ねて「泣いちゃだめ」だと思った。同情なんて自分だったら欲しくないと思うから。かわいそうだと言ってしまったことを後悔した。使っちゃいけない言葉に思えた。
***
「あのバカ」
早乙女女学院キーパー
(ムリムリムリムリ!)
割って入ろうと思ったが秒で諦めた。早乙女女学院。幼稚園から大学までの完全女子校。男性と言えば定年間際の教師しかいない。同年代の男子と接する機会なんて皆無だ。
キーパー
「えっと……なんですか?」
声を掛けたのは
「始めまして川守圭。私は早乙女女学院2年B組秋月蛍。得意教科は世界史よ」
(
(うん。今日クラス変えじゃないわよね……得意教科とか言われても……はっ⁉ これってなんか揺さぶりかけて仕掛けてくるヤツじゃないの? フェイントよ! もしくは歴女アピール?)
ん……? それはないだろと常識人の圭は思った。試合中じゃあるまいし。歴女はあるかもだが。とはいえ何も言わないのは気まずい。圭は秋月蛍のプレーについて触れることにした。
「秋月さん。後方でのボールキープ上手いですね、すごい練習量なんでしょ。それに視野も広い」
「そんなことはどうでもいいわ。でも、褒めてくれてありがと。うちの監督すぐ怒るし、周りは出来て当たり前って思ってて。ちょっとモタツイたら舌打ちするし……キーパーの
圭は瞬時に理解した。クールに見えて実はポンコツ。しかも出来る子なのに自己肯定感低め。
(
圭は心底ヤバいと思った。こんなのひとりでも十分手を焼いているのに、これ以上知り合いにこんなのが増えたら堪らない。タダでさえ、女子サッカーは何らかの症状を持った強者揃いだ。出来れば「間に合ってます!」で逃げたいところだ。
「川守圭。この記事のことホントなの」
秋月蛍は
(どうしたもんかなぁ……)
実際のところ適当なことを言って誤魔化してもいいのだけど、半分は
(仕方ないか……別に内緒にしてることでもないし……かと言ってオープンにしないとなのか?)
躊躇というか、戸惑いがあった。しかしその圭の心をくんだのか、思いもよらない方向から思いもよらない声が響いた。
「そうよ、だからなに? 別に誰にも迷惑かけてないけど。っていうかあなた誰よ?」
突然現れた私服の女子が不機嫌そうに答えた。
「誰って、あなたこそ誰です?」
「私? 私はそこのうだつの上がらない、なんだかなぁな顔した川守圭のステディですが?」
突然現れたのは吉沢
「あ、
「
「はい、
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