第35話 ダークホースに気付く。
(なんなのよ、この布陣……)
早乙女女学院
早乙女女学院は4バックを採用していた。それにキーパーを加え5人で後方からボール保持し揺さぶり崩す
事実前半戦はその作戦が功を奏し立て続けに3点奪い取っていた。そればかりではない。巧みにショートパスを多用し相手選手から足を奪っていた。
それが証拠に後半開始早々、
戦術は単純なほど奥が深く、練り込みやすい。それはサッカーだけの話ではない。しかし、例外もある。練り込まれた戦術は、理解しがたい布陣に拒否反応を示し、何に対して「拒否反応」を示しているのか、分析を開始する。
しかし、前半戦容易に手に入れていた分析時間が稼げない。早乙女女学院
(しまった!)
パス出しで大きくなったモーションを見逃してくれる石林ではない。軽くつま先でボールに触れ、難なく敵陣深くでボールカットに成功し保持した。
(神崎に出すんだよね……)
石林は圭の指示通り奪い取ったボールを単純に、もうひとりの
(な、なんでそんな「ちょろちょろ」するかな! あんた普段「ぼーっ」としてるでしょ、眠そうな顔して! なにお目目パッチリな感じなの! そんな動かれたらパス出せないじゃん! ほんと、もう‼)
石林はせっかく奪い取ったボールをロストしたくないので「えいや!」でいつの間にかファーサイド(遠いサイド )に移動した神崎『11番』にきつめのパスを蹴る。
「あ……っ」
(もう、もう、もう! 遠いっうの、神崎‼ 動き回るから引っ掛けたじゃない! これじゃファーサイドまで届かない!)
『ピ~~~~イ!』
頭を抱えかけた石林はわが目を疑う。ファーサイドの
「は、入ったの?」
(うそ⁉ マジ⁉ これ結果オーライ、だよね⁉)
『よ、よっしゃー!』
引退までに「A戦に出られないのでは」と毎日のように折れかけた心を奮い立たせ、コツコツと積み重ねた努力。
石林はわかっていた。すべての努力が報われる保証なんてないことを。でも、愚直なまでに石林は手を抜かなかった。前を向く姿勢、思いを崩さなかった。すべてはこの時のために。
「
石林は自分を推してくれたマネージャーに抱きついた。圭は「いいぞ、ナイスチャレンジ!」とガッツポーズで称えた。
「石林先輩、ナイシュー‼」
「よし、まだまだ追いつけるよ!」
「もう1点、もう1点‼」
後半立て続けにゴールを奪った
(お父さん、泣いてる場合じゃないよ。あたしのサッカー人生ここからが
後半開始早々
「石林先輩、ナイシューです‼ 完全に逆突いてました‼ ナイスフェイント‼」
駆け寄ったのは
「あっ……ヨッシー! いや、今のパスミスなんだ……」
「またまた! ご謙遜‼ 先輩に目を付けるなんて圭ったら、私ハナタカです!」
「そこドヤるとこなんだ。まぁ、いいけど……あっ、そうだ川守さん、カットしたボール出来たら神崎に回せって。意味わかる?(小声)」
「
(
脳筋
「したら、私、めっちゃボール要求します!
「あっ、それ助かる! 今度「ツー温玉」サービスするからね!」
「えっ、マジですか! やった‼」
ちなみに石林『19番』の実家は圭たちの最寄り駅近くにあるラーメン店『康候軒』以前
「なによ、あの娘、石林には
ちょっと、ジェラシーな
***
「ごめん。完全に逆突かれた『11番』神崎がいい動きしてた、引っぱられたよ、まったく、いい動きしやがる」
ゴールを決められた早乙女女学院ゴールキーパー
「私も簡単に取られて、ごめん。言い訳だけど『19番』うまいよ、
「完全に私狙われてるから、次は飛ばして。そこから速攻、振り切るわよ、いい?」と秋月は指示を出した。
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