第29話 ダメな子だと気付く。
「川守くん、監督が話通してくれるって……って、なにこれ⁉」
異変に気付かず吞気にスマホ片手に、しかも鼻歌を歌いながら現れた
『あっ、リア充クソ部員発見!』
『もうちょいで先輩が”モップ掛け”で口説けるとこを!』
『空気読めよ~ぶうぶう~』
『
『1年! な、なんか投げるもんない! ペットボトル! 中身入ってるヤツでいい!』
『先輩、
『それでいい!
(
(ははっ、みんな刺激ないからね。そうそう、説明めんどくさいから吉沢と川守くんいとこって事にしてるから)
(ありがと、助かる)
(もう少しからかいたいんだけど、いい?)
(いいのか、水筒投げてこないか?)
(それ冗談だって、見てて)
「ごめん。今までお世話になりました
『うわっ、センパイが血を吐いた‼ 大丈夫です、センパイのカレシはコートですから! 白目むかないで‼』
『うぅ……名前呼び……実在したんだ……ガクッ』
『センパイ‼ 大丈夫ですか⁉ バイタル安定してます‼』
『ふふ、私の心のバイタルは振り切ったけどね(ガクッ……)』
『センパイ~‼(絶叫)』
***
「ごめんね、なんか女子部のノリで」
吐血した(?)先輩は両脇を抱えられながらコートに消えた。そう言えば「後でお願いあるの」と
「あぁ、アレか。ちょい恥ずかしいんだけど、圭クン」
「えっ、圭クン⁉」
「あっ、ごめん。脳内設定。圭クンは『なごみん』でお願いします(ぺこり)」
「な、なごみん……⁇ あの……話見えないんだけど?」
「実はさ、恥ずかしいんだけど『
「特典は?」
「え?」
「だから『脳内カレシ』? オレ的には『エア・カレシ』の方がいいんだけど?」
「え⁉ いいの、川守くん、じゃないや圭くん⁉ 特典はあるよ! そうね、特製わたしの変顔とかラインで送るよ?」
「変顔⁉ そこはエッチな写真だろ?(笑)」
「えっ⁉ 顔出しNGな感じのやつならギリいいけど……」
「
「スク水⁉ スク水なら顔出しNGの方がまだいい!」
「いや、なんで脱いでる方がいいんだ! なに『私脱ぐとすごいの』みたいなやつ?」
「いや、ごめん。普通? ってか普通の裸ってなに⁉ なにこれ楽しい!」
そう言って「どうせみんな根掘り葉掘りだろうから」とふたりで、付き合ってる
「コホン。えーと。わたくしこの度、川守くんこと圭クンの『エア・カノジョ』に就任しました、
圭は無事校内に入る許可を得た。
「ごめん、もし嫌だったら答えなくていい」
「えっと……」
「圭クン、そのみんなね、中学の。聞けなかったんだ。私もだけど。さっき言ったよね『彼女
圭は立ち止まった。呼び止められたから、声を掛けられたから、それとも夢に向けて歩む足を止めていたから。止まっている時間にそっと体を合わせたかったからか。圭自身もわからない。
「私もその……膝なんだけどね、やっちゃって。前みたいに飛べないんだ、思うように行かなくて……ごめん、肺と膝じゃ全然だよね、ごめん。立ち入って」
「――普通には生活出来てる。体育の授業も流す程度にはね」
圭は振り向いて口角を上げた。そんな圭に「無理しなくていいよ」と
「ホント余計なことだけど……」
「ん?」
「誰かに言えてる? 吉沢とか、中学のサッカー部の子たちに。無理よね、近すぎるもんね。私はほら、離れてるし無神経っていうのかな? 自分で言うのもなんだけど。聞くよ、いくらでもあるでしょ、愚痴とか悔しさとか。わかんないけど吐き出さないと、苦しいよ」
「まぁ、アレだ。
「そ、そう⁉ マジか……いやあだ名的にした方がハードル下がると思ってんだけど、じゃあ
「そうだな、
「なにが?」
「この冬休みに入る前に許嫁が出来た。吉沢
「ごめん、圭クン。生意気言うよ?」
「あぁ」
「それ、違くない⁉ 全然違くない⁉ そんなの絶対間違ってるよ! 方向性おかしいよ! 誰がそんなことするの? 親⁉ そんなの……今そういう時期じゃないよ! もがき苦しんでる子供を見守る時期だよ! それで一緒にもがくの! だってさ、年代別代表に呼ばれて頑張ってたじゃない、体の事で、病気で夢諦めないとなのに、許嫁ってなに⁉ 方向性絶対変だよ‼ 私、今夜抜け出す! 寮から。暑苦しいって嫌われてもいい、話ししよ? だから、吉沢の試合終わっても帰んないで、いい?」
「それは……まぁ、冬休みだしいいけど。大丈夫なのか?」
「言うじゃない? 噓も方便って(ドンとこいよ!)」
「あっと……悪い。
「ん?
「いや、オレ帰りの電車賃なくてさ、貸してくんない?」
「あれ? なんだろ……急にダメ
圭は半笑いで頭を掻いた。
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