第26話 留年しそうだと気付く。
「先輩、私はただの通りすがりのクラスメイトと申しましょうか……マブダチ⁇」
いや、「通りすがり」と「マブダチ」全然違うだろ。なに変なトコでアピってんだ?
「先輩? じゃああなた、
(川守‼ おかしくない⁉ 絶対おかしいよね! だってさっき君私のことクラスメイトって紹介してくれたよね? クラスメイトって言ったら、だいたい同じ学園でしょ? 女神さまあまりに私に興味なさ過ぎて、草っ!)
(残念ながら、お前の言ってることは概ね当たってる。
(川守『
(いや、
『知らんのか~い!』と言い返そうとしたが、
「姉ちゃん、いい加減にしろよ、なんで下着売り場で絶叫してんだよ、だいたい、なんで弟と勝負下着買いに来てんだよ、もう! それからなんでヨーカドーの下着売り場で抱きついてんの⁉ このまま勝負下着使うにしろ、まずお会計しろよ!」
北見弟がそこにいた。
***
(おまえ、黒の上下って勝負掛け過ぎじゃねえか? 何に挑むんだ? なんかの世界戦か? タイトルマッチか? それともチョモランマか?)
(う、うっさいなぁ! いーじゃない、別にうれしいでしょ? 同級生の勝負下着が黒だってわかってムサビ泣きなさい! ってか私が泣きたい! 何に挑むって……自分によ! 自分の不甲斐なさによ‼ あれやこれや言い訳ばっかでなんにもして来なかった自分によ‼ そうでもしないと前に歩きだせないでしょ!)
***
「――で。なんでこの並びよ」
しかも正面に座ったはずの
「あの、質問いいですか」
もっとも冷静な北見弟が中3とは思えない落ち着いた声で発言した。「冷静さ」は最近の中3のトレンドらしい。
「どうぞ、この並びのことでしょ」
「この並びのことは別になんですけど、その……なんで姉ちゃん……姉がその……吉沢の許嫁の川守……さんに下着売り場で絶叫しながら抱きついてたのかな、と」
「だ、抱きついてないもん! し、しがみついてた?? ホールド・ミー・タイトよ! そ、そんな感じ! あと絶叫じゃないから、心の叫び? し、仕方ないでしょ、私だって青春したいんだし!」
「北見。悪いけど青春は下着売り場以外で頼む。あっ、フ―ドコートもダメな? ちびっ子でも親に注意されるからな?」
「あっ……そうね、それもそうか。いや、黒の上下でちょっちテンション上がったっていうか……ちょっちねぇ~な感じ」
「安いテンションね」
「姉ちゃんは黙っててくれ。話し
「いや、それは違わない。誤解があるようだけど、
圭はここは
「その……吉沢のお姉さんの下着を一緒に買いに来るって変じゃないですか、その吉沢は嫌じゃないのかって思って……」
「別に変じゃないわよ。私は圭が生まれた時からお世話してやってるの、普通よ。あなたはどうなの? 姉の勝負下着一緒に買いに来てるじゃない? それもたいがい変よ? しかも黒のレースよ? Eカップよ?」
弟相手に姉の黒の下着がレースなのは黙っておいてあげて! それから姉が「Eカップ」って情報、弟的には百害あって一利なしですから‼ デカいなあ
「姉馬鹿なんで」
「その……吉沢のお姉さんは姉ちゃんと同じくらい馬鹿ってことですか?」
「北見君。君の質問に対する趣旨とは異なると思うが
「なぁ⁉ 川守! そんな個人情報どこで手に入れたの⁉ えっ? 私ったら留年の危機なの? 知らなかった……早く言ってよ! なんかそこはかとなく諦めてない? 私の進級諦めてない? まだ諦める時間じゃないわよ‼ 頑張れ、川守! 頑張るの私か⁉」
「そうなの? じゃあ、スグに帰って勝負下着つけて勉強しないとね(笑っ!)圭の後輩ちゃん」
(川守〜一応言っとくけど勉強の気合入れるために買ったんじゃないからね! いや、勝負掛ける相手とかいないけども‼ いや、進級を賭けた終わりなき戦いはまだまだ続くけどね‼ これ少年漫画っぽくてよくない?)
「どうでもいいことだけど」と
「許嫁は親同士が決めたことよ。付け加えるなら、圭と私たち三姉妹のうち誰かと許嫁になるってこと。踏み込んで言えば
(いやいやいや、こんな目力最強のお嫁さんいりませんから!)
そんな圭の心の嘆きが届いたのかテーブルのしたに対角線で伸びた
まさに以心伝心の仲だ、お似合いかもよ圭?(他人事)
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