第25話 最後の希望に気付く。
「圭。どうせ暇でしょ、付き合いなさい」
「嫌だ。こう見えて疲れてんだ。知ってるか? オレ
「知ってるわよ。だからその労をねぎらうためにデートしてあげるって言ってんの。なに? 不服なの?」
どうしたことか、
よくないなぁ〜と思いながらも「圭のクセに生意気」になってしまう。後で「あんなこと言わなきゃよかった〜」となるのに。
「そうだなぁ……ツンデレ風で誘ってみろ」
「はぁ⁉ 馬鹿じゃないの? なんで私が圭にそんなことしないといけないのよ。まぁ、圭がどうしても私とデートしたくて、言い訳に使いたいならそうしてあげなくもないけど? でも、言っとくけどあんたのためじゃないんだからね! 勘違いしないでよね!」
上目遣いの『泣きホクロの女神さま』は圭の手の甲をつねり「もう、意地悪、なんだから……」と。
***
「デートってヨーカドーなのか、安いお姉さまだなぁ」
圭と
休日はそこそこ賑わっているが、流石に平日の午前となると閑散としている。まぁ、まだ開店数時間後なのだ。食料品売り場じゃなく衣料品売り場はそんなもんだろ。
「仕方ないでしょ。圭は
「その配慮はありがたいんだけど、下着売り場に連れてきてるってことに配慮はないのか? あとなんでヨーカドーの下着売り場でひれ伏した上に泣くんだ。それからヨーカドーさん悪気はないです、ごめんなさい」
なぜか川守、吉沢両家はヨーカドーに対しての依存度がバカ高い。若干神聖な場とも思ってる節がある「ヨーカドーで売ってんだから、大丈夫じゃない?」みたいな会話が頻繁にある。知らない奴が「ヨーカドー信者乙」など吐こうものなら……
「なによ、私がどんな下着着けるか気になるでしょ?」
「許嫁のお姉さまで妄想しろと? そもそも概ねお前の下着は知ってる。いつも付き合わせるだろ」
「違うわよ。高嶺のきれいな幼馴染がどんなの着けてるか常に知りたいでしょ。幼馴染としてよ。あのね、それとね、それは過去の私でしょ? 今の私は今までの私じゃないの、今の私が選ぶ下着を見なくてどうすんの? ねぇ、あんたの向上心てそんなもんなの?」
ちょっと何言ってるかわからない。謎のパワーワードをドヤ顔で言われても……まぁ、下着選びに付き合わされるのは、しつこいが今回が初めてじゃない。毎度のことだ。
そのことは
(まぁ、学校の知り合いと出くわさなけりゃいいか)
圭の頭に諦めの言葉が浮かんだ瞬間――
『ガタッ‼』
物音に振り返ると床に買い物かごが転がっていた。その側に人が立っていてその人物は口元を押さえていた。
「か、川守⁉」
そこには髪をお団子にしたクラスメイトの北見
「北見。よく会うな、家近所だっけ? 今日は『お団子』か? 自分でするのか? 器用だな」
「う、うん、ありがと。家はねヨーカドーのすぐ北側。川守は南の方だよね、確か……ははっ、何してんの? そのここ女性の下着売り場だけど……(もしかして川守そっち系の住人⁉)」
「なにしてるかって……何してんだろオレ(ズン……)」
遠い目をする圭に
――とその時圭を呼ぶ声がした。
「えっと……誰かと来てんの? そのお姉さん? ん? 川守ひとりっ子だよね……(お母さん……? いやいやお母さんはないわぁ~下着売り場だし!)」
「ねぇ、圭! このブルーのセットとオレンジどっちがいいと思う? このブラの刺繡めっちゃかわいくない?」
ひょこっと
「うっ……まさか『泣きホクロの女神さま』では⁉」
圭は
「な、なんだよ、北見⁉」
「き、北見じゃない! いや、北見ですが!」
突然現れた
「なんで川守が女神さまといるの? いや、なんで女神様が川守に下着相談してるの? 確かに刺繡めっちゃかわいいですが! これ夢なの? それとも私バカなの?? ごめん、失禁待ったなしなんだけど……」
圭はひとまず
「
「あら。随分仲良さげじゃない。彼女とデート中に『これは』ないんじゃない?」
「
「ふ〜〜ん、ただのクラスメイトにしては距離感近くない? 浮気じゃない?
(川守‼ おかしくない? 女神様が自分のこと彼女だって言ってたのに、 言うに事欠いて浮気とか本末転倒、一昨日来やがれじゃない⁉ あと『ただの』クラスメイトなんてひと言も言ってない‼ うちら同じ委員会だよね? もはやそれはただのクラスメイトなワケがない‼ ってか川守、聞いてる⁇)
「――で? 圭。私にどっちの下着着けさせたいの?」
圭は怯える
「そう? じゃあオレンジにする」
「ねぇ! 川守‼ 私どうしたらいい⁉」
「ど、どうってなに?」
「どうは、どうよ! なんか私、めっちゃ睨まれた気がするんですけど? 気のせいだって言って‼ 同じ委員会でしょ⁉ 保健委員!」
いや、保健委員関係ないから。
「睨まれたな。安心しろ、気のせいじゃない」
「なによ、それ。もっと励ます心はないのか? パートナーでしょ! 保健委員の‼ クラスメイトの健康と平和は私たちの肩に掛かってるのよ‼ 川守、自覚足んないんじゃない? 意識高く持たないと!」
「ない。っていうか。北見、お前バカなの? この状況、更にご機嫌を悪化させるぞ。それに保健委員に平和とか荷が重すぎだろ。付け加えるとお前に意識の低さを指摘されるとはな……」
「えっ? どういうこと?」
そんな呑気なやり取りはいつまでも続かない。
「ねぇねぇ、おふたりさん。なんで私とデート中なのにいちゃついてんの? 無事にヨーカドーから出たくないの? このままじゃ『無印』がある1階まで降りれないからね?」
「な? 北見。こういうこと」
「こういうことじゃないでしょ! 何とかしなさい‼ 君が私の最後の希望なのよ‼ いわゆるひとつの『ラスト・ホップ』なの‼」
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