第17話 忘れられない香りだと気付く。
「だから言ったじゃない」
翌日の朝。場所は圭の部屋。正確には圭のベットの上で吉沢家長女
圭があまりにも起きないので
「今日は……白のレースか」
「やるじゃん、当たり。あんたジャージ越しでよくわかるわね。ヘンタイも極めればここまで来るのね。有難く思いなさい、
そんなことを言う
「――で、
「まぁ、そこは褒めて遣わす。中学生の妹を遅くまで連れまわされたら心配だしね」
私立
圭の反撃で「あんなこと」や「こんなこと」があるかもとは考えない、いやないんだけど。
なので調子に乗り
もしこれが圭でなければ完全にご褒美だけど、小さい頃から事ある毎に「上に乗りたがる」
「ねぇ、圭。チューしたげようか? 許嫁のお姉さまのチューよ? 背徳感マシマシでしょ?」
怪しげな微笑で圭の肩を両手で押さえる。
「待て、
「あら。残念だわ、もう気付いたのね? 実はこんなこともあろうかと『康候軒』のニンニク増量特製豚骨ラーメンプラスニラを食べたの」
「お前、クリスマスに女子が食うもんじゃないだろ……サンタさん来ねえぞ?」
「大丈夫よ。だって私クリスチャンじゃないですもの。あと煙突もない」
(――康候軒だと……)
『康候軒』とは最寄り駅の駅前にある「ニンニク強め」が推しのラーメン店。しかもその通常の量産型ラーメンですら「ニンニク強め」なのに、更に3倍国産にんにくをすりおろした「ニンニク増量特製豚骨ラーメン」にさらに匂いが増すニラをトッピング。悪魔のスタミナ素材と化していた。
今頃、吉沢家はニンニク臭汚染が深刻化しているだろう……
いや、お隣さんの心配をしてる場合じゃない! いままさにその悪臭の根源たる
小さい頃から「酔ってないのにキス魔」な
なので、
ヤバい……このままでは「命的なもの」を取られる‼
そう覚悟した圭の耳元で
「くさっ‼ なにこれ⁉ そんじょそこらのおっさんより、おっさん臭してますが⁉ い、息が……マジで苦しい……」
「あら。相変わらずいいリアクションね。そんなに苦しいの? そんなに
「『ほれ』じゃねぇ~~‼」圭の絶叫がご近所を駆け巡った。
***
「――で、朝っぱらから何? この嫌がらせのためだけに来たのか? お前ホントに
「圭。わたしね人の期待に応えるために生きてるんじゃないのよ。でも――『泣きほくろの女神さま』だったかしら? そういうのも演じないとなの。でもたまにすごく疲れちゃうの。だからあなたの「めっちゃいいリアクション」が生きる活力なの。
「そ、その時
「ふふっ、甘々ね。あの娘にそんな屁理屈通用するとでも? どうする? バラしちゃう? それとも今までみたいな『ズブズブの共依存』な関係続けない? どう、今日はお姉さんに教えて欲しいことないの?」
無言で立ち上がり部屋の片隅にある黒いリュックの中をごそごそした。その後姿を
「
「ふふっ、いいわよ。いつもみたいに教えてあげる。パソコン使うわよ、例題を10個作ったげる。それであなたの苦手なところを割り出して、
ん……? いや、違う。これは世間一般で言う「共依存」じゃない。
だって「共依存」ってもっと不健全で逃れられない感があるハズ……『2次関数』は君たちちょっと「共依存」にカウントできないと思うんだけど……いや、まぁ朝から蒼い性のはけ口的な展開はないとは思ってたけど『2次関数』はないわぁ~~
「ありがと、助かる。相変わらず教え方うまくて感心する」
「どういたしまして。これくらいならお姉さんいつでも『教えたげる』からね。さっきのは
「そうなんだ……怒らせるようなことしない選択肢があるだろ……ところで、なんか用か?」
「用?」
「いや、朝から来てるし『だから言ったじゃない』とか言ってなかったか?」
「ごめん、
(ん……壮大に話が見えませんが。なんで
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