第13話 面倒事に気付く。
「いいね『エイのエイ太』
水族館の最寄り駅を降り水族館へ向かう道すがら圭は尋ねる。
聞きようによったら「あなた色に染めて」と言わんばかりの積極トークを展開するが、鈍感なふたりは気付かないで『エイのエイ太』のカラーバリエーションを頭に浮かべて「ほわわわ〜〜ん」となっていた。
まったくもう、初々しいぜ! ちくしょー!
しかしここで圭がやってくれた「じゃあ……ピンクの『エイ太』にする? ピンク好きみたいだし」
「え、えっちいいです! 史上最強にハレンチ圭ちゃんです! うぅ……覚えてろよぉ……」
いつものポコポコ攻撃プラス捨てセリフを
***
水族館で意外にも小さな事件が起こる。事件には無縁のふたりなのだが。
「あれ
水族館を一巡して売店に立ち寄った圭に声を掛けてきた女子がいた。振り返るとそこにはクラスの女子がいた。
彼女とは小中も同じなのでそれなりに面識があった。
「
北見
「見たよ、有名人! やっぱしあの写真の娘ってカノジョさんなの??」
「――でなに? 今日はひとりなの? ひとりでクリスマスの水族館って、もしかして振られて傷心中だったらメンゴ!」と手を合わせ片目をつむる。
幸いにも
「北見はどうなんだ? まさかひとりじゃないだろ」
「ははっ、それ聞いちゃいます? 残念ながらクリスマスは家族で水族館です! 小学生かよ……トホホっ……」
適当なことを言って
裏サイトの写真の正体と、今ひとりの理由を聞き出したくて
そこに――
「圭ちゃん……どちら様?」
ひょっこりと
「あの……裏サイトの方ですよね?」
一瞬だけどうしようか迷ったが、一瞬だった。
小声で「ただのクラスメイト」と付け加えてくれる許嫁がなんか誇らしく思えた。紹介された女子は「北見
圭は小首を傾げ同じように少し考えて「こちらは吉沢さん。吉沢
『許嫁〜〜⁉』
「姉ちゃん、何はしゃいでんだよ! 恥ずかしいからやめてくれ」
姉ちゃんと呼ぶ以上は弟なんだろう。よく見れば目元が似ている。
「うっさい! いまそれどころじゃないの! えっ、マジなやつ? えっ、吉沢
あまりの大声に
「はじめまして吉沢
「吉沢⁉」
「ん……? あっ、北見くん」
「えっ、なに? あんた知り合いなの?」
「えっ、クラスが同じだけど……」
「マジか……聞いて驚け弟よ。ふたりは許嫁だって‼」
「えっ……」
「そういや私、川守と長い付き合いだけどライン知らないんだけど、なんで?」
「なんでと言われても、連絡し合うことがないからだろ」
「えぇ⁉ 冷たい〜〜許嫁さん、冷たいと思わない?? 小学から同じなんだよ? しかも何回もクラス同じなのに……それとも、許嫁さん。川守のライン聞いちゃダメな感じ?」
「そんなことないですよ、圭ちゃんが必要なら」
「なら、決定! 川守教えて‼」
「えっ、普通に嫌だけど。用事ないし……
「えっ⁉ マジか……女子のライン知りたくないとか、どんだけ満たされてるの? いいから貸しなさいって‼」
「えっと……許嫁さん?」
「吉沢です。吉沢
「いい格好?」
「はい。私、考えてみたらヤキモチ焼きなんです。きっといま圭ちゃんが普通に教えちゃってたらたぶん、こっそりヤキモチを焼いてたと思います。その圭ちゃんも乗り気ではないようなので……今回はご遠慮頂ければと……」
ぺこりんと頭を下げた。
「あの、川守に質問。その……尻に敷かれてるってことなの? 教えると許嫁さんが怖いってこと?」
「いや、別に怖くないけど……って言うかクラスのグループラインでわかるだろ?」
「いや、わかるけど! そういうんじゃないんだよなぁ~~尻に敷かれてる?」
「敷かれてねぇよ。
実は面倒くさいことを根掘り葉掘り聞かれたくないから教えなかっただけなのだが、これはこれで知らないうちに
(やっぱし圭ちゃんは誠実な人だ)
ほんわかした気持ちにひとり
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