第12話 お揃いだと気付く。
「ごめん。
「それで……?」
「いや、その慣れてなくって……女子と出掛けるの。サプライズとなると更にわけわからんと言うか……ごめん」
「ん……私としては圭ちゃんが女子と出掛けることに慣れてないっていうのはむしろ歓迎ですよ、サプライズだって、そういうの慣れた人じゃない方が好……」
ここで
(あ、危ない……危うく『好き』っていいかけた‼ 汗が吹きでる! 制汗デオドラント〜〜)
滑りかけた口を押さえた。別に『好き』のひとことふたこといいと思うのだが、本人はそうじゃないらしい。
(こんなんじゃ、私が『好き』って言い慣れてる感じじゃない⁉)
「――で、なに?」
圭は会話が途切れたので聞き直した「なにって、なにでしょう??」と
あわわわっとなりかけて、圭を見ると……
(むむっ……圭ちゃんたら半笑い……さては謀ったな‼)
「圭ちゃん、まさか……『好き』って言わせようとしてますか? いや、してますよね?」
「ははっ、バレたか。残念」
(な、なんて
(しょ、正直者は得をする……私の『トリセツ』覚えててくれてるんだ。だ、大好きって言って『ぎゅう』とかしたいけど……)
そこはやはり、良妻賢母。階段はひとつひとつなのだ。先を急いで思い出の取りこぼしはしたくない。
(――でも……)
「ま、
「ふふっ、これ私からのサプライズです。これくらいですが、サプライズになりますか? これ以上はちょっとなんですけど……」
コクコクと言葉が出せなくてただ頷く許嫁に
(やっぱり、圭ちゃんは圭ちゃんだ)
***
「ここなんてどうでしょう?」
着替えを済ませたふたりは今近所のファミレスにいた。何のためというと……
「ここか……行ったことないけど、見えるかなぁ……海」
そう、
圭たちが通学に使っている私鉄『ハマ電』は海岸線を沿って沿線が伸びていた。
ハマ電の駅前周辺に的を絞れば『海の見えるファーストフード』を見つけやすいと踏んでいた、
しかし、意外と『海の見えるファーストフード』という条件を満たさない。
そもそもファーストフードは沿線沿いに多い。海から少し内陸に走る国道にファーストフードは集中している。
それはそうなんたが、ふたりは隣り合わせで圭のスマホを覗き込んで「ここどうですか?」「窓側の席が海かなぁ」などと、肩寄せあって小一時間「あーでもない、こーでもない」をやっている。
いや、これ十分にデートじゃないだろうか。真剣なふたりは普段なら顔を真っ赤にしてしまう距離にいるのも気付かない。
「圭ちゃん、何かドリンク取ってきましょうか?」
その言葉に圭はようやく「はっ」とする『海の見えるファーストフード』に気を取られて時間を忘れていた。
「
「あっ、そうですね、わすれてました」
圭の言葉に
水族館に行って『海の見えるファーストフード』にたどり着くにはちょっとハードスケジュールになりそうだ。
それでもふたりに焦りはなかった。幼馴染として育ったふたり。
お互いの成長を間近で見てきた。今までは間近だったけど、それとなく見るだけの関係。
それが今は計画を立てる間柄に変わっていた。
(圭ちゃんが私をその……選んでくれたからだ)
溢れ出す感謝と『今』を共有している満足感が
水族館に向かうハマ電に揺られながら
「あの圭ちゃん。今日はクリスマスですよね」
「そうだね」
「その……急だったじゃないですか、その……い、許嫁とかもだし、クリスマス……そのデート?」
あまりに圭の前で赤面するもんだから、
その辺りは実は大丈夫。圭は圭で直視出来ないので、
「うん」
「それでですね、私クリスマスプレゼント用意出来てなくって……」
「あっ、ごめん。オレもだ……ははっ……って笑い事じゃないか。
「でも、それは仕方ないことかと。その……だって、急に色々決まったり変わったりで、びっくり仰天の日々だったんで……でも、私恥ずかしながら欲張りさんなんです。これも私の『トリセツ』です、テストには出ないですよ(笑)」
声を抑えて笑いながら
地元ではなかなか人気のキャラでカラーバリエーション豊かなキーホルダーが販売されていた。
「お互いに選びっこしませんか『エイのエイ太』それでカバンに付けましょう」
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