第10話 終わったことに気付く。
「ごめん、遅くなって。母さんがパンとサラダ、それから目玉焼きも持ってけって。どうしたの? 顔赤いけど……」
圭は母親の指示どおり普段は引かない青いチェック柄の「ランチョンマット」を敷き、その上に朝食を並べた。
「あ……大丈夫……です。お構いなく」
ちなみにこの「お構いなく」はノーブラな私に「お構いなく」という意味だ。逆に「お構いがあった」ら大変だろう。
いや、そもそもノーブラに構うという発想自体どうかしてる。お詫びして訂正します。
圭は小首を傾げるも「そう?」と特に気にしない。そして
とは言えふたりきりで取る朝食は初めてのこと。お互いパジャマだし「お泊り旅行」に来ていると錯覚したり、しなかったりのちょっと夢見心地な
和やかな空気の中、初めてのふたりきりの朝食を終えた。最初は「着けてない」ことが気になっていた
いや、食事が終わるイコール帰宅が目前に迫っていたので気分的に楽になっていた。
だがしかし、そうは問屋が卸さないがここで来た。その頃には圭の母親も出掛け、圭の自宅にはふたりきり。流石にふたりきりも少しは慣れてきた。
食器をふたりで運び一緒に洗った。
(あぁ……なんかもう、これだけでもクリスマスプレゼントだ)
小さな幸せ欲しがりさんの
「
「あっ『また、お会いしましょう』ですね。私まだ見てないんです、見たいなぁ~~とはずっと思ってるんですけど」
「そうなんだ、それ聞いてきのうダウンロードしたんだサブスクで。もしよかったら見ない?」
「えっと……それはこれからですか?」
本音を言えば一刻も早く自宅に帰りたい。しかし、自分との会話で出た『見たい映画』という言葉を忘れずにいてくれた、ひとつ年上の許嫁が愛おしい。いやむしろ『
(何を隠そう、いや胸は隠してますが! ノーブラなんです、わたくしは!)
ハグなんてした日には『むにゅん!』な感覚が伝わりかねない。そうなると「あれ、もしかして
いやならないけどね‼
しかし、
「なんか用事ある?」
(あるとは言えない! あるなんて言ったらこの後のクリスマスの約束がなくなるかも……)
「圭ちゃん、覚えててくれたんですね! うれしいです! 用事は……うん。ないよ?(震え声)」
腹を決めた
***
(な、なし崩しで映画を見ることになってしまった……)
一応、圭のプライドを守るために付け加えると、何ひとつ圭は「なし崩してない」ただ許嫁とした会話で出てきた映画の事を覚えていて
もちろん
そもそもノーブラなのを知らない。
そして「良妻賢母」な
今回
姉妹の中で頭脳担当と言って間違いないだろう。
自分が推しておいて、ノーブラ
『
『どうしたの? いまあんた圭のトコでしょ? なんかエッチなことされた?』
『そうじゃなくて……実は私ブラ着け忘れてて……(大泣)』
『マジ⁉(大汗) で、圭は知ってるの?』
『まだ気付いてない、どうしたらいい?(うるうる)』
『わかった。私に任せて! 圭には何もされてないのね?』
『ないよ! いま映画見てる、一緒に。
『心配しないの。私は力自慢じゃないから。すぐ行くから(ダッシュ!)』
こうしてようやく
「
呑気な顔した圭に
「いい。これ見たから。結局『世界は滅びない』わよ。そんな事より圭、あんた
明らかに不機嫌な口調で映画のネタバレをした挙句。
「だったら年下の許嫁がいま『ノーブラ』で困ってることくらい、わかってあげたら? それが許嫁ってものでしょ?」
ドヤ顔で言い放つ。しかも着ていたパーカーのポケットから何やら薄ピンクの布地を取り出した。
「はい、持ってきてあげたわ。早く着けなさい」
いい顔で
(えっ……? えぇ~~~~⁉ な、なんで圭ちゃんの前で私のブラ出すかな⁉ しかも広げなくてよくない? あと、なんで映画のネタバレするの⁉ いや、内容入ってきてないけど‼)
いくら
自分のブラ流出した上、ノーブラだとバレ、映画のネタバレまで……なんか色々終わった気がした
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