第9話 天啓に気付く。
(こ、これってまさか噂のパジャマパーティーだったり⁉)
あくびをしながら「コーヒーでも
確かにお互いにパジャマなのは間違いないが、目的は恋愛トークだったり趣味とかの話に花を咲かせることではなく、純粋に「救出活動」だった。
次女
まぁ普通のスポーツ女子が軽々と男子を宙づり出来ないように、今の状況が「パジャマパーティー」を開催してるかも、とはならない。普通は。
しかしそこは前向きに物事をとらえる「良妻賢母」候補生の
前向きなのはいいが、将来変な壺や英会話の教材を買わされないか心配だ。
「――あっ‼」
思わず大きな声を出してしまった。突然の事だったので
だから多少の「身支度」が出来てないくらいどうもない。圭のピンチを救ったのだから。
しかし――なにがどう「身支度」が整ってないか気になるところだ。確かに駆けつけた時は髪がひと房「ぴょこん」と寝癖になって立っていた。
だけど「身支度」が整ってないというほどではない。むしろ「ぴょこん」と立った寝癖がかわいくもあった。
中学三年生なので基本すっぴんだ。わずかにピンク色の保湿用リップを塗るくらいだし、自他共に認める地味っ娘。今更すっぴんくらいどうもない。
じゃあ、なに?
(あわわわわわ~~‼ わ、私……忘れてる‼ 着けるの忘れてる‼)
何をと聞きたいところだがカーディガンの上から胸元を隠すところをみると……
アレを着け忘れているのであった‼
(これ、絶対にアカンやつだ……パ、パ、パジャマパーティーどころか……)
『ノーブラパーティー』じゃん‼
ちなみに現在の
その下はキャミソールを着ているが残念ながら「カップなし」だ。しかしパジャマの上には丈の長い茶色のカーディガンを羽織っている。
圭に透視能力がない限り
これは考えようによれば「ノーブラ版シュレーディンガーの猫」と呼べるのではないか。
つまり、圭に
いや、無理か……ノーブラは自己申告済みだ。
(い、許嫁になったばかりの圭ちゃんのお部屋で、私まさかのノーブラ……デビュー⁉)
取り乱したい気持ちはわかるが、別に「ノーブラデビュー」はしていない。実際気付いてるのは本人の
なにより、いま圭は気をきかせてモーニングコーヒーを淹れに行ってくれている。この隙を突いて自宅に帰って「着けて」くればいい。
(よし、ここはひとまず帰ろう……)
こたつに手を付いて立ち上がろうとした時、
(待って、待ってわたし‼ いま慌てて部屋を出ようとしたとして……)
素知らぬふりをして帰ろうとするが、時すでに遅しで圭がコーヒーを淹れて戻る。一度はこたつに戻ったものの、恥ずかしさのあまり
何もないところで
(上が全部めくれあがって……圭ちゃんの上にのしかかるヤツ‼ 世にいう『ぽろり』っていう文化だ! ある! これある! 女子あるあるだ‼ 危ない! 危うく圭ちゃんに「エッチな娘」認定されるとこだった! セーフ‼)
そんな「女子あるある」はないし、「ぽろり」は文化でもない。しかし
(それにしても遅いなぁ……圭ちゃん)
(今からでも遅くないかも……)
そう思った瞬間またしても
(危ない! 絶対コレダメなヤツだった……危うく難を逃れた……でかした私)
新たな
もう時間がないと今度こそは大慌てで脱出しようとする。しかし再びの「時すでに遅し」が若い二人の仲を切り裂く。
今度こそ脱出して「身支度」を整えようと焦ってドアを開ける
そして突然ドアが開いたことに気付かずドアノブに伸ばしたハズの圭のその手は――
(私の胸を……『むにゅん‼』と。そして『むにゅん‼』からの『圭ちゃんのエッチ!』ビンタ‼ これ女子の定番だ……まさに女子あるあるの極み‼)
あえてひと言苦言を言うなら、なにも極まってない。そんな女子あるあるはきっとないし、そこまでのラッキースケベは存在しない。
そんなわけで
出来ることは耳まで真っ赤に染めて圭の戻りをこたつで待つだけだった。
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