番外編 私と私
「これがホームシックってやつか……」
一人暮らしを初めて一ヶ月が過ぎた。
私は毎日ホームシックになっている。
「家に帰りたい。人怖い」
本当は大学には行かないで就職をしたかったけど、お母さんに「あんたはまだ社会に出すには早い」と言われて仕方なく大学に通っている。
私が就職したかった理由は、それならこれから知り合う人の人数が減るからだ。
どうせ大学を卒業したら働かなければいけないのだから、高校を卒業して就職したら大学で出会う分の人と会わなくて済んだ。
だけどこればっかりはしょうがない。
「澪に会いたい」
私の妹は私と違って才女だ。
努力家で要領がいい。
それはお母さんもそうだったようで、澪はお母さん似で、私はお父さん似らしい。
私の人見知りはお父さんに似た結果のようだ。
姉妹仲は、いい時もあるし悪い時もある。
私が素の時は仲がいいけど、私が演じてる時は仲が良くない。
ちなみに私は澪が大好きだ。
あんなにいい子は他にいない。
澪がもし誰かと付き合うって言ったら、演じた私が詰め寄っても動じない子でなければ認めない。
浮気するような人に澪は任せられない。
「でも澪に嫌われるのかなぁ」
それは嫌だ。
澪に本気で嫌われたら泣く。
次の日に支障が出るレベルで泣く。
なんて妄想を毎日して日々を乗り切っているのだけど、そろそろ辛い。
澪の誕生日が近づいてきているのにお母さんの命令で私から電話をかけることも出来ない。
だからなにかの間違いで澪から電話がかかってくるのを願うしかない。
悩みの種はそれだけではなく、最近ずっと大学で男の子によく話しかけられる。
私の外面は人受けのいい優しいギャルを目指していた。
だけど私から話しかけることなんてしないから、優しいの部分が伝わらず、ただの男を食い物にしてるやばい奴になっている。
だから私に女友達はいない。
男の子は嫌でも寄ってくるのに。
自分の性格を変えた理由は精神の安定の為だ。
私は緊張しいなので、人に話しかけられると焦る。
人混みになんか行ったら本気で倒れる時もある。
そんなことを続けてたらさすがにお父さんに心配された。
だから私は外での自分を変えた。
無理やり違う自分を作ってしまえば簡単で、人に話しかけられても話せるようになった。
その代わりに最初は素に戻ると軽く寝込んだ。
今では慣れて寝込むことは無くなったけど、澪からは不評なのでほんとはやめたい。
いつか本当の私で話せる人が出来たら普通に話す練習に付き合って欲しい。
「よし、現実逃避終わり」
大学に行く前はいつも早くて五分から長くて三十分ぐらい現実逃避をする。
多分気持ちの切り替えが必要なんだと思う。
「さてと」
これからまた、理想の自分を作って大学へ行く。
実際の理想とは少し違う結果にはなっているけど、人と話せるからそれでいい。
「今日もいるのかな?」
毎日推しカプ? や好きな女の子の話を延々としてくる男の子はいるのか考えるようになった。
名前は最初に聞いたけど長く付き合う気がなかったから忘れてしまった。
あの人は私がどれだけ興味が無いオーラを出しても話をやめない。
それどころか軽くあしらうと嬉々として話を続ける。
だからその人のことを勝手にドMさんと呼んでいる。
失礼なのは分かっているけど、私が冷たい態度を取ると何故か喜ぶから仕方ない。
「ドMさんって私に構わなければモテそうなのに」
ドMさんがいなかった時に女の子が話しかけてきて付き合っているのか聞かれたことがある。何回も。
私が唯一女の子と話せるのがその時だ。
その時にドMさんの名前を言われた気がするけど、やっぱり思い出せない。
「ま、いっか。武装完成」
高校生までは気持ちの切り替えだけだったけど、大学生になってからは薄いお化粧を武装と呼び、お化粧が自分を偽るスイッチになった。
「澪には負けるけど今日も可愛い」
こんなことも自分を偽っていれば簡単に言える。
「私を私として見てくれる人いないかなぁ」
そんなことを思いながら大学への道を歩き出す。
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