番外編 陽太君とお眠
(大丈夫だよね)
お母さんの手を借りたのは癪だけど、陽太君を部屋に誘う準備は出来た。
後は陽太君を誘うだけ。
でもこれがまた難しい。
せっかく部屋を片付けたのに、今になって恥ずかしくなってきた。
部屋に男子を呼ぶ。
別に他意はないのだけど、いざ誘おうとすると、ほんとに片付けられていたかとか、見えるところに何か見られたくないものがあるのではないかとか考えてしまう。
きっと陽太君なら私の部屋にどんなものがあっても嫌ったりはしないんだろうけど、どうも気になってしまう。
だけどついに陽太君を誘うことが出来た。
そして昼休みに影山さんから、からかい方を教えて貰おうと思った。
「日野君をからかうとか誰にも出来ないよ」
「それは分かってるんだけど、一回は照れさせてみたいじゃん?」
「寝るのが好きな日野君なら、膝枕とかしたら喜んでくれるんじゃない?」
別に私は陽太君に喜んで欲しいとかじゃなくて、からかいたいだけなんだけど、まぁ参考にさせてもらうことにした。
膝枕なんて高等技術は最終手段なんだろうけど。
「本人の前で話す内容か?」
私達の会話を聞いていた明月君にそんなことを言われる。
私達はいつも通り四人でお昼を食べているから、もちろん陽太君も居る。
これもからかいの一つだったのだけど、陽太君はいつも通り天使の笑顔でお昼ご飯を食べていた。
「良君なら今ので照れてたね」
「普通はそうなるだろ。日野が気にしな過ぎなんだよ」
「気にしてないって言うか、話の内容が分かってないのと、お弁当が美味しいことしか考えてないんだよね」
陽太君はなんでも美味しそうに食べる。
実際美味しいと思いながら食べてるんだろうけど。
「でも今日は少し元気無い?」
「元気が無いって言うよりかは、心ここに在らずって感じだな」
私は放課後の事で頭がいっぱいで気づかなかったけど、確かに少しいつもの陽太君と違う気がする。
「さすがの日野君も女の子の部屋に行くのに恥ずかしさを覚えてるのかな?」
「ほんとに?」
それなら少し嬉しい。
もしかしたら私の部屋では陽太君に勝てるかもしれない。
「本人に聞けばいいだろ。隠し事しないんだから」
「それもそっか。陽太君、お眠?」
「うん。ちょっと眠い」
まぁ陽太君だった。
「ごちそうさましたら寝よっか」
「ごちそうさまでした。おやすみなさい」
陽太君はいつの間にかお弁当を食べ終えていて、片付けをしてすぐに寝た。
「早い。いつもは寝ないんだけどね」
「ちゃんと片付けてから寝るあたり日野だよな。誰かと違って」
「誰?」
「お前だよ」
影山さんと明月君が夫婦漫才を始めたので無視して陽太君の寝顔を眺める。
「氷室さん。お弁当食べないと」
「あ、つい」
陽太君の寝顔はずっと愛でていたい中毒性がある。
陽太君の寝顔をおかずにご飯は食べれないだろう。見ることに集中し過ぎて。
そして放課後になり、私は陽太君を部屋に招待した。
とてもドキドキしているけど、陽太君にはバレていないだろうか。
陽太君に私の香りがして落ち着くと言われて気づいたけど、変な匂いがするとか言われなくて良かった。
だけどやっぱり陽太君は少し変だ。
相当に眠いようで、今にも倒れそうになっている。
そしてついに私の方に倒れかかってきたから支えて座らせた。
「今日はお疲れなのかな?」
それならちゃんと布団で寝た方がいい。
だけど無理に動かして陽太君を起こしてしまったら可哀想だから。
「そう、これは仕方なくね。したくない訳じゃないよ、うん」
一人で言い訳みたいなことを言って、陽太君の身体を支えながら倒す。
そして私の膝の上に頭を乗せる。
「あ、これいい」
前屈みになれば陽太君の寝顔が見れて、しかも頭も撫でやすい。
「寝てる陽太君相手なら恥ずかしくないし」
これからも頻繁にやっていこうと思ったけど、陽太君が私の前で寝るのは既に寝てる時だけだから出来そうにない。
「夜更かしでもしたの?」
私はそんなことを言いながら陽太君のほっぺをつついた。
この時は高揚感みたいので気づいてなかったけど、ここで気づいていたら良かったのだ。
それから私は陽太君が目覚めるまで寝顔を眺めたり、頭を撫でたりしていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます