H4.11.25(水)晴れ

 英米文学研究のレポートが書けない。もともとレポートの類は大の苦手で、それでもこれまでの三年間やぶれかぶれになりながらどうにかやってきたのだけども、今回はどうしても書けない。まるで何も思いつかない。捨てることも考えたが成績評価にかなりの影響を及ぼす課題なのでそういうわけにもいかない。この授業の単位を落とせば留年は確定だ。鬼の平松のことだから救済措置は望めない。レポートのテーマが発表されたのは半月前、提出は明日の授業開始時である。一限が始まるのは九時だから、今日は寝ないとしてあと十六時間。二週間かかって書けないものが十六時間で書けるはずもない。日記なんて書いている場合ではない。こういうときはイオに頼るに限る。イオの家に行ってきます。

 寝転んでテレビを見ていたイオに、カラオケおごるから、と言って頼み込んだところ、ものの三十分ほどで書き上げてくれたので、約束通りカラオケに行ってついさっきまで歌っていた。イオが書いたそのままでは筆跡でばれてしまうから自分で書き直すつもりだったのだけど、器用なイオは最初から私の字をまねて書いてくれたのでその手間も省けた。本当に頭が上がらない思いだ。カラオケでは彼女の言うことをすべて聞き、飲みたがるもの、食べたがるものをなんでも注文した。例の、イオのお気に入りの曲も歌った。リクエストされるままに三回歌った。レポートから解放された高揚感も手伝って、ありえないほど盛り上がった。楽しかった。

 それで今はまたイオの部屋に戻ってきていて、風呂が沸くのを待つ時間でこれを書いている。カラオケから出るとき、泊まらせてよと言ってみたら意外にもすんなり許可されたのでおどろいた。もっと拒まれるものと思っていた。だめと言われても押しかけるつもりではあったけれど。着替え貸してと頼んだら渋い顔をされたが、じゃあ風呂のあと今日着てた服また着てここで寝るけどいいんだねと言うと快く貸してくれた。イオは優しい。さて風呂が沸いた。入ってくる。

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