　イオの誕生日だったので、午後の授業は自主休講にして隣駅のデパートへ一緒に行った。前からことあるごとに新しい財布がほしいほしいと聞こえよがしに言っていたから買ってあげようと思ったのだけれども、どれもこれも高すぎていったん退却することになった。しかし、駅の裏手のカフェで休もうかと話しながら歩いていく途中、大通りの街路樹の下でブルーシートを敷いてバッグやら財布やらを売っている人を見つけた。近寄ってのぞいてみるとルイヴィトンのコピー品だ。安いうえにかなり出来もいい。これいいじゃんと言ってみたところ大笑いしていたので、一番本物に見えるものを選んであげた。こんなのさあ人前で使えないじゃん、などとぶつぶつ言いながらも、カフェに到着してすぐ今まで使っていた財布から中身を移していた。なんだかんだかわいいところもあるものだと思った。そう言ったらふきげんそうな顔をされたけれど、それもやっぱり愛らしく見えた。

　ついでなのでショートケーキをおごってあげた。ちゃっかりロイヤルミルクティーまでおごらせようとしてきたものの、それは無視した。イオはこういうとき半端に高いものを選ぼうとするからたちが悪い。そのうえ途中でショートケーキに飽きて私のタルトと交換したいと言い出した。まったくわがままな女だ。交換しても構わなかったけれど、甘やかしてつけあがらせてもいけないので心を鬼にして断った。むすっとした彼女の顔が面白かった。そうしながら、いつか彼女はこんなわがままを全部聞いてくれるような男と幸せになるんだろうかとふと考えていた。

　眠いからもう寝る。課題は明日やる。今日はとても疲れた気がする。