探し物

 あつしは、真夏日の炎天下の中、一時間以上も探し物をしていた。

 失くしたのは、妻との大切な結婚指輪だったから、なんとしてでも見つけなければならなかった。

 しかし、汗が流れて頭もぼーっとしてくる。

 流石にそろそろ疲れたので、少し休憩をとろうと思っていたところに、ちょうどいい木陰があるのを見つけた。

 敦はブロック塀に腰掛けて、ハンカチで汗を拭う。


 そうして暫く休んでから、そろそろ立ち上がろうとした時、何故か隣にいたカエルと目が合った。

「ゲコ」

 カエルは鳴く。

「干からびるぞ」

 敦はカエルが心配になり、池はないかとキョロキョロと辺りを見回した。

「あった!」

 敦はカエルを池に放そうと、目の前に手を差し出す。

「おいで」

 声をかけると、言葉の意味が分かっていると言うように、カエルは敦の掌に乗って来た。

「ゲコ」

「いい子だ」


 敦がカエルを池に放すと、カエルは嬉しそうに泳ぎ去って行った。

「帰るか」

 敦が諦めて帰ろうとした時、自分の足元に指輪が落ちている事に気付いた。

 それは、敦が探していた指輪だったが、こんな所に落とした筈はない。

 敦が不思議そうに首を傾げると、何処かで「ゲコ」と鳴く声がした。

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