第二十五話
気が付けば、すべてが終わっていた。異形は跡形もなく消え去り、あたりにはぼろぼろになった次元、三日月、滝女郎が横たわっている。
私は、まだうずくまっていた。すべては終わった。終わってしまった。あの美しい日々は、もう決して戻らない。それだけが、確かだった。
それだというのに、それを受け入れられない自分がいる。これを受け入れてしまっては、私のすべてが、崩れてしまいそうだった。
「いちごぉぉ……」
最愛の人の名前を呼ぶ。返事はない。当たり前だというのに、それが恐ろしく悲しかった。
「いちごぉぉ……、いちごぉぉ……、いちごぉぉ……」
なんども、なんども、愛しい人の名前を呼ぶ。もういない、その人の名前を。
朝日が私のみじめな姿を照らし出す。
何時間泣きはらしたろうか。やがて私は立ち上がり、三人を一人ずつ家へと連れて帰る。幸い軽傷だ。数日休めば、問題ないだろう。
運び終えて、私は自分の部屋に戻る。変わらない部屋。きっと、このすべてのものに手を付けることはできない。引っ越しでもしようか。このままを保存して。金ならいくらでもある。それが今は、憎かった。
引き出しを開ける。いつだったか撮った、いちごとのプリクラがたくさん入っていた。
「良き人よ、こんなどうでもいいものを……」
といいながら、私は一枚一枚眺めていく。どれも捨てられない、大切な思い出。もちろん私だってこれは持っている。しっかりとケースに入れて。それを知られると気持ち悪い女だと思われそうで、ついにいいだすことができなかったけれど。
「おや……?」
一枚の封筒がある。見覚えがない。封もしていない。なにかの請求書だろうか?
開ける。手紙だった。私宛の。
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