第二十一話

「うわぁ……」

 私は思わず息をのむ。

「何度も来ている場所だろう」

 思春様はいつものようにやれやれといった表情を浮かべていた。

「でもさ、明日。ここで結婚式があるんだよ?私たちの。それってさ、素敵なことだと思わない?」

「まぁ、思わなくもない」

「ひどい!」

「事実だろう。一度目より感動する二度目はそうあるものじゃない」

「うぅ……、思春様全然ロマンチストじゃない」

「君がロマンチストすぎるだけさ」

「もう少し雰囲気に浸ってもいいじゃん」

「あいにく、そういう柄でなく生きてきてしまったからな」

 わたしはちょっぴりしょぼんとする。

「ただ、嬉しいよ、いちご」

 ぼそっと思春様はつぶやく。あ、今名前で呼んでくれた。

「もう一度、結婚式ができるのが」

「ホント?」

「ここで噓をいってどうする。嬉しいさ。とても、な」

「私、結婚式終わったらたぶん死んじゃうよ?」

「それでもいい。それだからこそ嬉しいといったら、失礼かな?」

「ううん。全然そんなことない。私も嬉しい。やっぱり、思春様に喜んでもらうのが一番だから」

「最後まで他人思いですね、良き人は」

「違うよ。ただ、一人ぼっちが嫌いなだけ。知ってると思うけど、淋しがり屋なんだよ、私」

「知っていますよ。だから、放ってはおけなくなる。ずるい性格の持ち主ですよ、良き人は」

「ごめん」

「なにをいまさら。すべてを愛し、添いとげると誓ったのです。きれいですよ、良き人よ」

 私の頬を撫でて、思春様は微笑む。

「明日。楽しみです」

「うん、私も」

 そしてしばらく、私たちは見つめ合って、キスをして、明日に備えてちょっぴりエッチなことをして、眠りについた。

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