第十四話
「そうか、いちごが……」
麻美からの電話で、次元はいちごのことを知った。
いちごのことを知って以来、次元はルパンや五右衛門、不二子に頼んで半年間仕事をキャンセルさせてもらっていた。
次元が一服する。煙が小さな隠れ家に充満する。隙間風が多いため、少しすれば煙は消えていった。
「どうするのだ」
来ヶ谷が訊く。
「どうもしない。成り行きに任せるさ。お前こそ、どうするんだ。大切な妹だろ?」
「同じく、どうもしないさ。どうにもできない、といったほうが正しいんだろうが」
「ままならねぇもんだ、人の世なんて」
「お前にいわれると、説得力が違うな」
「説得力なんてどうでもいいのさ。世の中には幸せになりたくてもなれない奴が沢山いる。いちごもその一人ってことなんだが……」
また次元は一服して、そこで会話は途切れた。
「あ!パパだ!」
「よぉ、じゃじゃ馬。元気してたか」
数日後、パパが家に帰ってきてくれた。
「盗みのほうは大丈夫なの?」
「問題ないさ。俺の心配をするなんて、てめぇも図々しい奴だ」
「でもさ、この前大けがしたじゃん。あれ以来心配で……」
「骨折ったくらいで、大袈裟なんだよ」
「いやぁ、大変なことだと思いますよ?骨を折るってことは」
そういう私に、パパはからからと笑う。
「具合はどうだ?」
「うん、ちょっと前より、ずいぶんいいよ。ごめんね、いろいろ迷惑かけちゃって」
「まったくだぜ。こんなじゃじゃ馬だと知ってたら、養子縁組なんてしなかったさ。あのころはてめぇもおとなしかったのによ」
「ご、ごめん……。出来の悪い子どもで」
「ま、子どもなんてみんな出来が悪くて親に迷惑かけるもんさ。それが申し訳ないって思うんなら、とりあえず馬鹿みたいにはしゃいでいつまでも元気でいるこったな」
「う、うん……?なんか微妙にバカにされてるような……」
「あ、ばれたか?」
「パパ!」
また、パパはからからと笑う。
「元気そうでなによりだ。近くの家を数か月キープしたからな。これから少し、厄介になるよ」
「え!?パパ近くに住んでくれるの?」
「数カ月だけだがな」
「やった!」
私は大はしゃぎだ。
「じゃ、じい様もばあ様もそういうことだ。世話になるぜ」
パパが目くばせする。
「うむうむ。よきかなよきかな」
「まったく、バカが増えたわい」
こうして、私の家はまた賑やかになる。
結婚式まで、あと二か月とちょっとだ。
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