第十話

 目が覚めると、そこにはみんないた。

 審神者さんもいた。

「気分はいかがですか?」

 優しく柔らかい声で審神者さんがいう。

「は、はい!なんだかとっても元気です!」

 近い!近いよ!美人顔が!輝いている!俺、もう倒れそう……。

「そうですか。よかったです」

 横になっている私の髪を、優しく撫でる。ああ゛ぁぁぁ。幸せなんじゃ~~~。

 もうこのまま死んじゃってもいいくらい。

「良き人よ」

 その一言で目が覚める。ちらりと見ると、思春様の目が笑っていなかった。

「ずいぶんとまぁ、惚気てくださいますね。私という人がいながら」

 オーラを感じるとはこういうことなのだろうか。思春様の後ろに、えげつない極大のジェラシーを見る。

「だ、だってさ、その、審神者さん、美人だし……」

「言い訳無用!即刻三下り半を叩きつけてあげます!」

 そう怒鳴って、思春様は部屋を飛び出した。

「ま、待って!」

 私も、バッと飛び上がって、追いかける。

「なんともまぁ、呑気な。見せつけてくれる」

 パパは煙草をふかしていた。

「ここ、禁煙ですよ?」

 ママが静かにいさめる。

「うるせぇ。あんな惚気見せられて、吸わずにいられるか」

「愛煙家はあなただけなんですから、外でお吸いになられて」

「へーへー」

 面倒くさそうに、パパが部屋を出る。

「さて、と」

 審神者さんがパンと手を叩いた。

「とりあえず、あと半年、いちごの好きなことをしてあげましょう。短い命、大切に生きてもらいませんと。ですがまずは、思春との仲裁でしょうか」

 思春様はがなりたてるわ、私は泣きじゃくるやらで、カオスと化したリビングに審神者さん、ママ、おじいちゃん、おばあちゃんがやってきて、六時間超の説得の結果、一週間思春様に好き放題抱かれるという条件の元、離婚は回避できた。

 でも、凄いんだよ、思春様が抱くと決めた時の夜は。ホント、くたくたになっちゃう。

 けれどなんで、どのくらい好き放題抱かれるかを決める時に、みんなはあんなに呆れてたんだろう。

 けっこう、大事なことだと思うんだけどなぁ。

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