第六話

「うん!やっぱりおばあちゃんの漬物は最高だね!」

 私はニコニコしながら、夕食をほおばっている。

「あれだけ思春に迷惑をかけておきながら、よくがっついていけるな」

「えへへ。これが若さってやつ?」

 途端に思春様が笑った。目は笑っていない。

 私は慌てて土下座する。

「事の重大さがわかっているなら結構。迷惑をかけられるのもくたびれるのですよ?」

 やれやれ、といった顔で、思春様はまた箸を取って、肉じゃがを食べ始めた。

「あはは。やはり大人数で食べると賑やかだな」

 朗らかな顔でいうおじいちゃん。

「あれからよく眠れたか?」

「うむ。ばあさんの布団で寝ると、最高によく眠れるぞ」

「当たり前ですよ」

 意外なところで、夫婦円満ムーブをかましてくる。

 これはあれか?私たちもかましたほうがいい感じか?

「邪知はおやめなさい、良き人よ」

 思春様はそういうだけだ。

「だけどさ」

「だから、邪知はおやめなさい。いまはただ、おばあ様の料理を堪能しましょう」

「へーい」

 そういって、私はまたニコニコしながら、おばあちゃんのご飯をほおばる。

 今日は満月だ。

 明日も、なにごともありませんように。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る