口車/第23回のお題「車」

 正当化できない恋をした。


 学生時代、同級生の男子たちは恋愛対象外だった。

「大人びてる」とか「ミステリアスな雰囲気だよね」とか、勝手に高嶺の花扱いして、私を遠巻きに見ているだけだから。

 大人になってからも、「彼氏が途絶えたことがないらしい」とか「手練れみたいよ」とか、勝手に恋愛経験が豊富だと噂して、彼らは私を遠ざけた。


 誰も踏み込んでこない。誰も私の真ん中には触れない。

けれども、あの人だけは違った。


 「私はただ、あの人の口車に乗っただけ」と、許されない恋の始まりを見て見ぬふりをした。

そして、まんまと…。

 出よう出ようともがいても、抜け出せない沼の中。

ここから清らかな蓮の花は、絶対咲くことはないというのに。

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